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【新薬】抗悪性腫瘍薬 テモゾロミド
テモダール:悪性神経膠腫に有効な点滴静注用剤

2010/03/26
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

 2010年1月20日、抗悪性腫瘍薬テモゾロミドの注射製剤(商品名:テモダール点滴静注用100mg)が製造承認を取得した。テモゾロミドを主成分とする薬剤としては、2006年7月にカプセル製剤が「悪性神経膠腫」の適応で承認されているが、今回承認された点滴注射製剤は、カプセル製剤と生物学的同等性が検証された結果、カプセル剤と同じ適応で承認されている。

 悪性神経膠腫とは、脳腫瘍の神経膠腫に分類される腫瘍群のうち、悪性度の高い腫瘍の総称である。この悪性神経膠腫は、脳組織内に発生し周囲の脳組織内に浸潤しながら発育することから、脳機能を保持するために外科的手術、術後放射線療法、術後補助化学療法を組み合わせた治療が行われる。

 このうち、術後補助化学療法では、ニムスチン塩酸塩(商品名:ニドラン)、ラニムスチン(商品名:サイメリン)、インターフェロンβ(商品名:フエロン、IFNβモチダ)などが用いられ、さらに2005年にはニムスチン塩酸塩、プロカルバジン塩酸塩(商品名:塩酸プロカルバジン)、ビンクリスチン硫酸塩(商品名:オンコビン)の3剤併用療法(PAV療法)が、悪性星細胞腫または乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する治療として認められてきた。

 テモゾロミドのカプセル製剤は、国内の脳腫瘍関連の適応を持つ抗悪性腫瘍薬として19年ぶりに承認された薬剤であり、現在、局所放射線照射との併用及びその後の単独療法、また再発の悪性神経膠腫の治療薬として広く使用されている。

 テモゾロミドは抗悪性腫瘍薬の中ではアルキル化薬に分類され、肝臓での代謝を必要とせずに生体内でメチルジアゾニウムイオンになり、DNAをメチル化することによってDNA損傷を引き起こす。これにより、細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導し、細胞増殖を抑制する。さらにテモゾロミドは、血液脳関門を通過しやすく、脳脊髄液への移行性も良好という特徴がある薬剤である。

 テモゾロミドの点滴注射製剤は、頭蓋内圧上昇に伴う悪心・嘔吐や、脳幹への腫瘍の浸潤などによって、カプセル製剤の服用が困難な症例などに対して、有用な治療選択肢である。海外では、1991年にEU(欧州連合)で承認されて以降、カプセル及び注射製剤を合わせて世界90カ国で承認されており、点滴注射製剤は33カ国で承認されている。

 テモゾロミドの点滴注射製剤の承認で、悪性神経膠腫患者における治療選択肢が拡大されることになる。なお、今回承認された点滴注射製剤は、従来のカプセル製剤と生物学的同等性が確認されていることから、悪性神経膠腫に対する新たな有効性と安全性の検討を主目的とした臨床試験は行われていない。したがって点滴注射投与においても、カプセル製剤と同様に、白血球減少や血小板減少など骨髄抑制、ニューモシスチス肺炎、感染症、間質性肺炎、脳出血、アナフィラキシー様症状などの重大な副作用の発現に十分注意することが必要である。

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