日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
耐糖能異常者へのバルサルタン投与で糖尿病発症が14%減
ただし心血管リスクは低下せず、NAVIGATOR試験の結果

 耐糖能異常のある人では、2型糖尿病と心血管疾患のリスクが高い。こうした耐糖能異常者に生活改善に加えてレニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬を投与すると、糖尿病と心血管イベントのリスクは低減できるのだろうか。この疑問の答えを得るべく無作為化試験を行った米Duke大学Robert M. Califf氏らは、RA系阻害薬投与群では、偽薬群に比べてその後の糖尿病リスクは14%減るものの、心血管リスクには差はないことを示した。論文は、NEJM誌電子版に2010年3月14日に掲載された。

 著者らが行ったのは、生活改善を行う耐糖能異常患者を対象に、バルサルタンと偽薬の影響を比較する二重盲検の無作為化試験、NAVIGATOR(Nateglinide And Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research)。この試験は、40カ国の806施設で、耐糖能異常(空腹時血糖が95mg/dL以上126mg/dL未満)で、心血管疾患のある50歳以上の患者、または心血管危険因子を保有する55歳以上の患者を登録。併存疾患を有する患者や過去5年間に糖尿病治療薬を使用していた患者、高血圧治療を目的としてRA系阻害薬を使用していた患者は除外した。

 02年1月4日から04年1月29日までに、9518人の患者を、無作為にバルサルタン(最高160mg/日)または偽薬に割り付け。バルサルタンは当初80mg/日を適用し、2週間で160mgまで増量した。

 NAVIGATORは2×2ファクトリアルデザインであるため、バルサルタン群、偽薬群のそれぞれをさらにナテグリニドまたは偽薬に割り付けた(関連記事参照)。

 全員に、糖尿病リスク低減を目的とする生活習慣改善を指導した。体重を5%減らしてその数値を維持すること、飽和脂肪と総脂肪の摂取量を減らすこと、週に150分間運動することを目標とした。

 主要エンドポイントは以下の3つに設定。糖尿病発症、主要な心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院からなる複合イベント)の発生、より広範な心血管イベント(主要な心血管イベントに、不安定狭心症による入院、動脈血行再建術を加えた複合イベント)の発生。

 追跡期間の中央値は糖尿病発症について5.0年、主要な心血管イベントについては6.4年、より広範な心血管イベントは6.3年、生存は6.5年だった。

 設定された評価指標のすべてにおいて、ナテグリニドとバルサルタンの間に交互作用は見られなかった。

この記事を読んでいる人におすすめ