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NEJM誌から
耐糖能異常者へのナテグリニド投与は糖尿病発症を抑制せず
心血管リスクも下がらず、NAVIGATOR試験の結果

 耐糖能異常のある人は、2型糖尿病と心血管疾患のリスクが高くなっている。NAVIGATOR Study GroupのOxford大学Churchill Hospitalの Rury R. Holman氏らは、耐糖能異常者に生活改善を指導すると共に、短時間作用型インスリン分泌促進薬のナテグリニドを投与しても、2型糖尿病発症と心血管イベント発生のリスクは下がらないことを明らかにした。論文はNEJM誌電子版に2010年3月14日に掲載された。

 耐糖能異常患者が生活改善を実践し、血糖降下薬を使用すれば、2型糖尿病の発症を抑制できることが知られている。しかし、そうした治療によって心血管リスクが下がるかどうかは明らかではない。また、短時間作用型インスリン分泌促進薬が、耐糖能異常患者の糖尿病または心血管イベントのリスクを低減できるかどうかはこれまで検討されていなかった。

 この二重盲検の無作為化試験NAVIGATOR(Nateglinide And Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research)は、40カ国の806施設で行われた。耐糖能異常(空腹時血糖が95mg/dL以上126mg/dL未満)が認められ、心血管疾患のある50歳以上の患者、または心血管危険因子を保有する55歳以上の患者を登録。併存疾患を有する患者や過去5年間に糖尿病治療薬を使用していた患者は除外した。

 02年1月4日から04年1月29日までに、9518人の患者を無作為にナテグリニド(最高60mgを1日3回食前に投与)または偽薬に割り付けた。ナテグリニドの1回量は当初30mgを適用し、2週間で60mgまで増量した。

 この試験は2×2ファクトリアルデザインになっており、ナテグリニド群、偽薬群のそれぞれをバルサルタンまたは偽薬に割り付けた(関連記事参照)。

 全員に糖尿病リスク低減を目的とする生活習慣改善を指導した。体重を5%減らしてその数値を維持すること、飽和脂肪と総脂肪の摂取量を減らすこと、週に150分間運動することを目標とした。

 主要エンドポイントは以下の3つに設定した:糖尿病発症、主要な心血管イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院からなる複合イベント)の発生、より広範な心血管イベント(主要な心血管イベントに、不安定狭心症による入院、動脈血行再建術を加えた複合イベント)の発生。

 追跡期間の中央値は、糖尿病発症については5.0年、主要な心血管イベントについては6.4年、より広範な心血管イベントは6.3年、生存は6.5年だった。

 設定された評価指標のすべてにおいて、ナテグリニドとバルサルタンの間に交互作用は見られなかった。

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