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やっぱりdiscussion上手は得

2010/03/30
津久井宏行

 あなたは自分がディスカッション上手だと思いますか?

 ある日、患者さんの治療方針をめぐって、2人の医師がディスカッション(?)をしていた。どちらの言い分も、もっともな部分があるのだが、それぞれが自分の専門性を優先するため、議論は平行線のまま…。指摘している側は、別段非難するつもりで言っているように見えないのに、言われた側は、必死に抗弁している。「何も、そんなにむきにならなくても…」と傍で見ていたのだが、ふと考えると、日本では似たような場面に出くわすことが少なくないと思った。

 そして、相手のために良かれと思って指摘した方も、「そこまで抗弁されると、もう言ってもムダだな…」と感じてしまい、次からは指摘することさえためらってしまうことになる。こうして、日本では「侃々諤々」(かんかんがくがく)の場面は少なくなっていく。

 アメリカでは、よく「カンカンガクガク」の場面に出くわした。しかし、そこには、どこかお互いに役者を演じている節があった。「さて、今回、自分はこの方向性で意見を主張する立場になった。本当は100%そう考えていない部分もあるんだが、今日は100%そう考えているとして、discussionしようじゃないか」と、激しく意見をぶつけ合う。

 そして、discussionの中では、「年長者である」「経験がある」といった理由で遠慮することも少なかった。さらに、discussionに感情を持ち込むことが比較的少ないため、discussionが終わると「No side」。discussionはdiscussionであり、終われば、「はい、それまで」とさっぱりとしている。「今みたいに、意見を忌憚なくぶつけられる相手がいることをうれしく思うよ」と、握手をしかねないほどである。

 最近、日本の学会でも見られるようになった「Pro and Con」(ある治療法に関して、賛成派と反対派に分かれてディスカッションする)は、このあたりに端を発しているのだろう。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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