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GIST診療ガイドライン、術後イマチニブの推奨度など見直しの必要性も 【胃癌学会2010】

2010/03/10
八倉巻 尚子=医学ライター

 消化管間質腫瘍(GIST)診療ガイドライン第2版が発刊されてから1年半が経過した。昨年、イマチニブによる術後補助療法のZ9001試験の結果がLancet誌に発表されたのを機に、ガイドラインで現在は推奨度「C」となっているイマチニブの術後補助療法を「B」に変更すべきかどうかが検討されている。3月3日から5日まで新潟市で開催された第82回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティング「GISTガイドラインの検証」で、大阪警察病院外科の西田俊朗氏が明らかにした。討論の中では、推奨度の変更に賛否両論の意見が交わされた。

 診療ガイドラインは第1版が2008年3月に作成されたが、同年6月にイマチニブ抵抗性GISTを対象にスニチニブ(商品名:スーテント)が承認されたことから、およそ半年で改訂され第2版が発刊された。さらにその後もGISTに関するエビデンスが出ており、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)などの欧米のガイドラインとの違いが見られるようになった。

 その1つが術後補助療法だ。昨年、フェーズ3試験であるZ9001試験の結果がLancet誌に報告された。GIST患者713例を対象とし、術後補助療法としてイマチニブ400mg/日を1年間投与した結果、プラセボ群の無再発生存率は約83%に対し、投与群は98%で、有意に再発を抑制することが示された(p<0.0001)。

 Z9001試験は無作為化プラセボ対照試験であり、医学専門誌であるLancet誌に掲載されたことから、ガイドライン作成委員会では、推奨度をBにしてもいいかどうかの議論が再燃している。コンセンサスミーティングの討論では、賛成と反対の意見があり、全生存(OS)のデータは出ていないこと、腫瘍3cm以上に対して全例を対象とするのか、投与期間をどうするかなど、検討すべき点が多いとする意見が相次いだ。

 またリスク分類に関し、現在のガイドラインは腫瘍径と核分裂像数によるmodified Fletcher分類を用いている。しかしNCCNでは、腫瘍径と核分裂像数に加え、原発臓器を考慮したMiettinen分類を用いており、こちらの方が悪性度の高いGISTを検出するのに優れているとも言われている。だが、Fletcher分類で欧米のデータと日本を含むアジアのデータを比較すると、アジアの方が再発率は低く、予後は良好な傾向を示す。そのため「日本のデータがないのに、同じようにMiettinen分類を引用していいのか疑問がある」と西田氏は話した。

 このほか、効果判定基準には、WHO基準やRECIST基準が使われてきたが、近年、choi基準も実臨床に則し有用であることが分かり、これについても、ガイドラインで見直す必要があるとした。

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