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胃癌取扱い規約の改訂で胃癌治療ガイドラインとの棲み分けが明確に 【胃癌学会2010】

2010/03/10
美奈川由紀、八倉巻尚子=医学ライター

 胃癌取扱い規約が前回改訂から約10年ぶりに改訂され、第14版として3月3日に発行された。3月3日から5日まで新潟市で開催された第82回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティングで、胃癌治療ガイドラインとの棲み分けなど、改訂のポイントが解説された。また、この改訂によって今後はTNM分類と連動した利用が可能となった。

 第13版までの胃癌取扱い規約は、ステージ分類やリンパ節の定義といった症例の記載法に加え、手術や化学療法などの治療法、病理の分類法を網羅し、規約一冊で胃癌診療のすべてが分かるものだった。第14版では、治療部分は胃癌治療ガイドラインに移行し、胃癌取扱い規約は腫瘍の状態と治療の評価を記録するための「基本となるルール」を示すものとなった。今回の改訂によって、規約とガイドラインの役割が明確に分担されることになった。

 また、改訂の特徴の1つとなるのが、リンパ節転移やステージ分類をTNM分類に変更したことだ。具体的にはT分類は、T3がSS、T4aがSEなどへと変更された。当面は混乱を避けるため、T3(SS)など深達度を併記することが望ましいとした。さらに、N分類ではこれまでのリンパ節群によるものが廃止され、転移の個数によって評価されることとなった。TとNの定義が変わることで、その組み合わせであるステージ分類も変わった。改訂第14版では、TNM分類と共通のルールを青色、胃癌取扱い規約独自のルールを黒色の文字として表記するなど、変更箇所を把握しやすくする工夫がされている。

 さらに改訂第14版では、生検組織診断分類(グループ分類)に大幅な変更があった。これまでのグループ分類では、腫瘍か否かの判定に困る場合はグループ3が適用されてきたが、改訂後はグループ2が適用されることになった。そのためグループ2における解釈については、詳細な補足説明が加えられるなど配慮もされている。癌に近いのかあるいは良性に近いのかについては、病理医と積極的にディスカッションすることが今後重要となり、「学会としてもこの点については周知徹底させたい」と、胃癌規約委員会委員長の愛甲孝氏は改訂後の重点課題とした。

 なお、薬物療法の効果判定には、これまでのWHO効果判定基準ではなく、RECIST 1.1を採用しているが、X線像や内視鏡像による原発巣の評価も別途記載すること、としている。

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