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特集●中医協委員・関係者が語る「2010診療報酬改定」 Vol.4
今改定で中小病院の“生き残り策”が示された
中医協委員(茨城県医師会理事) 鈴木邦彦氏

──今回初めて、中央社会保険医療協議会の委員として改定の議論に加わった感想は。

鈴木 地方の医師会の代表として、医療機関や医師数が少ない地域でも、十分な医療を提供できるような診療報酬の大幅な引き上げを期待して議論に臨んだ。

 だが、実際に議論を終えてみると、報酬の引き上げは非常に難しいことだと実感した。これまではいわば“外野”として、「なぜもっと上げてくれないのか」と不満に思うだけだったが、中に入ってみると、景色はまた違って見える。民主党に政権交代しても財務省からの圧力は強い。刻々と進んでいく医療崩壊を食い止め、地域医療をさらに充実させていくための財源を十分確保できる状況には、残念ながらならなかった。

 そんな中で今回、10年ぶりに全体の改定率がプラスになり、特に危機に瀕しているといわれる救急、小児、産科、外科といった分野に重点的に配分できたことは良かったと思っている。

 だが、プラス改定なのだから、入院基本料や再診料など、どの施設も算定できる点数にまず“広く薄く”点数を付け、その上で重点分野に手厚く配分するべきだったのではないか。

 例えば診療所にとっては、再診料が2点下がり、その穴埋めのような形で「地域医療貢献加算」(3点)が新設された。これは時間外にも対応する診療所を評価した点数ということだが、私は再診料を下げずに、プラスαでそうした取り組みに点数を付けるべきだったと考えている。

──今回は、病院重視の改定だったが。

鈴木 中小病院への影響については、急性期医療を積極的に行っている施設にはかなりプラスになると思う。一方、慢性期医療が中心で、新規入院患者が少なく、看護体制が手薄な施設は不十分な結果となった。

 ただし、そうした施設でも悲観することはない。今回、在宅療養支援病院の要件が大幅に緩和され、200床未満の病院で体制を整えれば、どこでも算定できるようになったからだ。今度の改定には、民間中小病院の今後の役割として、在宅医療に積極的に取り組んでほしいという厚生労働省のメッセージが込められていると思う。

 私は中医協で、中小病院や有床診療所が今後目指すべき姿を示していけるような議論を行いたいと思ってきたので、在宅医療やリハビリテーションなどに関する点数が引き上げられたことは評価したい。

 日本が充実した医療を提供できているのは、診療所のレベルが高いこととともに、大病院と診療所のすき間を埋める形で中小病院と有床診療所がきめ細やかな医療を提供してきたことが大きい。こういった施設が、超高齢社会の医療の担い手として在宅医療などを手厚くカバーし、医療崩壊が進む厳しい時代を乗り切っていければと考えている。

過疎地などへの報酬上の配慮が必要
──明細書の無料発行が原則義務化される。

鈴木 現場が混乱することは十分あり得る。例えば、患者から質問があった場合に対応する人手が必要になる、膨大な紙代が医療機関の負担になる…などだ。患者以外の人が明細書を受け取る場合もあり、プライバシーをどう確保するかも問題だ。中医協でも話題になったが、癌を告知していない患者で腫瘍マーカーを測定した場合などの対応も必要だろう。

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