しばらく前、知り合いの医学教育研究者に「このごろハンガリーが外国人の医学生を育てる留学事業をやってるの知ってる?」と聞かれました。「自分たちが医学生だった30年ほど前に、米国の若者が医師になるのに、プエリトリコだとか国外の医大を出て、ECFMGの認証を得て医師になる方法が流行っているなんて聞きましたが、そういう手法ですか?」「まあ、似たようなものだけど、そういう事業を学校法人じゃなくて、国がやってるんだ」。その時は「そういうご時世なんだ」と頭の隅に置いていましたが、4月8日付の週刊新潮にその話題が取り上げられました。
記事によると、ハンガリーの国立大学では、自国の学生の学費は無料。外国の学生からは、そう高くないものの授業料を徴収します。これで教育コストをまかなっており、さらに外貨獲得ができれば一石二鳥。日本も民主党がマニフェストで、医師数を1.5倍にすると打ち出しており、両国でこの制度をうまく利用し合えれば教育費が浮く…という内容でした。
そこで、さっそくハンガリー医科大学事務局(http://www.hungarymedical.org/)なるサイトを見てみました。留学事業というと、留学志望者を集めて着手金を取ってドロン、という詐欺事件も多いからでしょうか。「悪質な業者に注意するように」という文言とともに、正式に国家が認めた事業であるとの認証書(http://www.hungarymedical.org/img/letter.pdf)を掲示してあります。
サイトには、「日本や米国は難関で費用もずいぶんかかる。ハンガリーは学力だけでなく人間性を重視した選考で、日本よりも安い費用で、良質な医学教育が受けられる」など、いかにハンガリーでの教育がすばらしいかが書かれていますが、ちょっと厳しい話も入っています。一番肝心なのは、医師国家試験で、まずはハンガリーの医師国家試験に通らなければいけません。ハンガリーの医師免許の試験は、6年生のときに卒業論文を完成させた後、英語で行われるそうです。ハンガリー医科大学事務局の説明によると、この試験もだいたい全員合格しているとのことです。
海外の医学部で学んだ人が日本の医師になろうとする場合に、一番の関心は日本の医師免許をちゃんと取れるかどうかということですが、日本では厚生労働省が審査に当たり、受けた教育のレベルが結構厳しく問われます。上のサイトでも、その旨のことわりは、以下のように説明されています。
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著者プロフィール
竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。
連載の紹介
竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。
この連載のバックナンバー
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2010/07/20
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