日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
腹部大動脈瘤の血管内手術と開腹手術、長期死亡率に差なし

 腹部大動脈瘤AAA)の修復を血管内手術または開腹手術によって受けた患者の転帰を8年間にわたって調べた試験(EVER1)で、両者の全死因死亡率、動脈瘤関連死亡率に差はないことが明らかになった。また、開腹手術が適用にならないAAA患者を対象に、血管内手術を受けた患者と介入なしの患者の長期的な転帰を比較した試験(EVER2)では、両者の全死因死亡率にも差はないことが明らかになった。2つの論文は、2010年4月11日付のNEJM誌電子版に同時掲載された。

血管内手術の手術死亡率は低いが、全死因死亡は開腹手術と差なし
 これまで、血管内治療を受けたAAA患者の臨床転帰を調べた研究の追跡期間はせいぜい2~3年だった。

 EVAR1試験の対象となったのは、1999~04年に、英国内の37病院で、大きなAAA(CT検査で直径5.5cm以上)の存在が確認され、血管内手術と開腹手術のいずれも適用可能と判断された患者1252人(AAAの直径の平均は6.4±0.9cm)。無作為に、血管内手術(626人、74.1歳、男性が90.3%)または開腹手術(626人、74.0歳、男性が91.1%)に割り付け。09年9月1日まで追跡した。

 主要アウトカム評価指標は、全死因死亡に設定。ほかに、動脈瘤関連死亡、グラフト関連合併症、グラフト関連再介入などについても評価した。

 対象患者のうち、血管内手術に割り付けられた12人と、開腹手術に割り付けられた24人は、割り付けられた治療を受けなかった。

 術後30日までの手術死亡率は、血管内手術群で有意に低かった。血管内手術群が1.8%、開腹群が4.3%で、調整オッズ比は0.39(95%信頼区間0.18-0.87、p=0.02)。

 6904人-年の追跡で、全死因死亡は524人。うち76人が動脈瘤関連死亡だった。血管内手術群の全死因死亡率は、100人-年当たり7.5、開腹手術では7.7で、調整ハザード比は1.03(0.86-1.23、p=0.72)。動脈瘤関連死亡は、血管内手術群が100人-年当たり1.0、開腹術群が1.2で、調整ハザード比0.92(0.57-1.49、p=0.73)と、いずれも有意な差は見られなかった。

 グラフト関連合併症を1回以上経験した患者は360人だった。血管内手術群が282人、開腹術群は78人で、調整ハザード比は4.39(3.38-5.70、p<0.001)。グラフト関連再介入を1回以上経験した患者は200人。血管内手術群が145人、開腹術群が55人で、調整ハザード比は2.86(2.08-3.94、p<0.001)と、いずれも血管内手術群で有意に高かった。

 8年間の動脈瘤関連コストの平均を比較すると、血管内手術群の方が3019ポンド(4568ドル)高かった。

 以上、EVAR1試験における中央値6年以上の追跡の結果、開腹術に比べ血管内手術の手術死亡率は有意に低いものの、長期的な総死亡率と動脈瘤関連死亡率には差はないことが明らかになった。また、血管内手術群にはグラフト関連合併症と再介入が有意に多く発生すること、長期的なコストはより高くなることも分かった。

この記事を読んでいる人におすすめ