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女性の社会進出とワークライフバランス

2010/04/28
日比野誠恵

 4月に入ってイースター(復活祭)が行なわれ、子どもたちが鮮やかに彩られた卵を必死で探している一方、わが家では3月に飾った娘の雛人形をそそくさと仕舞いました。アメリカでは残念ながら雛祭りの風習はなく、わが子が通うミネソタ日本語補習学校でちょっとしたお祝いがあった程度でした。その代わり、子どもも楽しめるイベントとして、イースターのほかに、バレンタインデー(日本のそれとはずいぶん違います)、ハロウィン、感謝祭、クリスマスなどがあります。

 今回は、過ぎ去った雛祭りを今再び祝う意味も込めて、女性の社会進出と彼女たちのワークライフバランスをテーマにお話ししたいと思います。

女性の進出を阻んでいた日本社会
 よい時代になったもので、アメリカでも日本のテレビ番組がインターネットを通して観られるようになりました。先日も、私の大好きな北野武さんの小説を原作にしたテレビドラマ「菊次郎とさき」を大笑いしたり感傷に浸ったりしながら観ましたが、当時は女性の社会進出の場が非常に限られていたことがよく分かりました。例えば、タケシの姉・安子は大変に賢い人であったにもかかわらず、結局は大学進学をあきらめてしまうシーンがあります。

 私の家族のことを振り返って考えてみると、母親は大学の英文科に行きたかったのに、親から「家政科なら進学してもいい」と言われたため、それに従ったそうです(もちろん、家政科が英文科に劣る、というようなことを言いたいのではありませんよ)。

 私が子どものころは、あからさまな男尊女卑こそなかったように思いますが、それでも「女のくせに」という言葉がまだ聞こえてきました。社会が裕福になるにつれて女性の地位が上がり、科学技術の進歩による様々な電化製品の普及、医学の発展に伴う小児死亡の減少、新たな避妊法の普及などがそれを後押ししていったようです。気が付くと、ウーマンリブ(もう日本では死語ですね)の波がアメリカから押し寄せてきました。そのころ流行したテレビドラマ「おれは男だ!」(現千葉県知事森田健作さんの主演)で、「ウーマンパワーをやっつけろ!」というセリフが出てくるような時代でした。

 その一方、わが家では専業主婦の母親(とても心配性)が父親を心配して、「もし死なれたら、家族3人で路頭に迷ってしまう。健康には十分に気を付けてもらわなければ…」とよく言っていたことを覚えています。子ども心に、「女性も働けるような社会だと、少しは心配が少ないのかな?」と思っていたものです(父親いわく、今のように、生命保険に手軽に入ることのできるシステムは確立していなかったようです)。

著者プロフィール

日比野 誠恵

ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授

1986年北里大学医学部卒。横須賀米海軍病院、セントジュウド小児研究病院、ピッツバーグ大学病院、ミネソタ大学病院を経て、1997年より現職。趣味はホッケー、ダンス、旅行など。

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