日経メディカルのロゴ画像

日経メディカル2010年5月号「トレンドビュー」(転載)
日医新会長の祝賀会が重い雰囲気に包まれた理由
“ねじれ”執行部が誕生、政策には新味なし(2010.4.28訂正)

選挙後の記者会見で「日本の医療のために一丸となって取り組む」と語った新会長と副会長。左から、羽生田氏、横倉氏、原中氏、中川氏。

 「唐澤祥人君 107票。森洋一君 118票。原中勝征君 131票。よって、原中勝征君を当選人と決定いたします」。その瞬間、会場からは大きな拍手とどよめきが起こった。

 4月1日に行われた日本医師会会長選挙。民主党とのパイプを強調してきた茨城県医師会会長(当時)の原中氏(70歳)が、3選を目指す日医前会長の唐澤氏と京都府医師会会長の森氏を僅差で破り、会長に当選した。各都道府県医師会から選ばれた代議員356人の投票で選出された。

 今回の会長選は、政権交代後初の選挙となり、「三つどもえの戦い」として注目された。親民主の立場から診療報酬改定などで政権与党に意見してきたと主張する原中氏、政権交代後も自民党支持を変えず、民主党から冷遇されてきた唐澤氏、そして「政権に左右されない」をキャッチフレーズに第三の道を目指すとした森氏。ただ、3月には全国数カ所で公開討論会を開催したものの、3人とも政策面での明確な違いは打ち出せず、結局、政権との“距離感”が大きな争点になった。

 当選直後の記者会見で原中氏は、「『日医は変わらないといけない』という思いが理解されたのだろう。国民に開かれた医師会、国民が生涯安心して暮らせるような医療を守る医師会を目指す」と抱負を語った。

 だが、その顔に笑顔はなく、都内ホテルで行われた祝賀会は、原中氏が当選したにもかかわらず、重たい空気に包まれていた。それとは逆に、敗北した唐澤陣営と森陣営の慰労会では、新執行部をまずまず肯定的に受け入れるとする発言が目立った。

キャビネット制廃止が裏目に
 その理由は、副会長選で原中氏が推薦した候補者が全員落選したためだ。副会長には、会長選で落選した森氏と唐澤氏が共に推薦する中川俊男氏と横倉義武氏、そして、前日医常任理事の羽生田俊氏が当選。新執行部の多くは、森・唐澤陣営の候補者で占められた(表1)。

この記事を読んでいる人におすすめ