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医師不足は外国人医師の招へいで解決できるのか
江原朗(北海道大学予防医学講座公衆衛生学分野客員研究員)

2010/05/18

はじめに
 2005年の「病院小児科医の将来需要について」(日本小児科学会)によれば、継続性のある医療体制を構築するのに1,000~2,000名程度の医師の増員が必要である[1]。一方、医師総数にしめる小児科医(主たる診療科が小児科である医師)の比率は、ここ10年間は5~6%前後で大きな変化がない[2]。

 したがって、小児科医を増やすには、医師総数の増加が不可欠である。たしかに、医学部医学科の入学定員を増やす動きはあるが[3]、医療現場でマンパワーの増加が見込めるのは、入学者数の増員後約10年後となる。

 一方、アメリカやイギリスをはじめとする諸外国では、医師不足外国人医師の導入で解決しようとする国もある。日本も外国人医師により医師不足を解決することができるのか検討することにした。
 
英米においては外国で教育を受けた医師が医師総数の3割を超える
 2009年のOECD Health Data[4]によると、日本の人口1,000人(全年齢層)あたりの医師数は2.09人である。一方、アメリカ2.43人、イギリス2.48人、フランス4.16人、ドイツ3.50人である。日本は先進諸国と比べて、人口あたりの医師数は少ない(表1)。

表1はこちら

 しかし、2009年に、「医療」の資格で日本に在留している医療者(医師およびその他の医療職、特別永住者を除く)は、146人(医師の0.05%)にすぎない(表2)[5]。医師不足を、外国人医師の招へいで補おうとする動きはほとんどない。一方、イギリスでは47,407人(医師の31.4%)、アメリカでは243,457人(医師の33.4%)が外国の医学校で教育を受けた医師である[4]。英米では、外国の医学校を卒業した医師が貴重な戦力となっている。

 表3に外国人医師の出身国を示す[6]。イギリスおよびアメリカでは、インド、パキスタンをはじめ、英語圏出身の医師が多く働いている。

表2はこちら

表3はこちら
 
外国人医師の受け入れと日本の制度
 「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」[7]によれば、「医療」の資格で医師が在留許可を得る場合、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事すること」が条件となる。十分な報酬が支払われれば、外国人医師を受け入れることは法的に問題ない。

 さらに、「外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第17条及び歯科医師法第17条の特例等に関する法律」[8]では、外国人医師が日本の医師免許を取得せずに医療行為を行える条件を示している。厚生労働大臣が指定する病院において、臨床修練指導医の実地の指導監督のもとで行う診療は、日本の医師免許のない外国人医師にも開放されている。

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