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BMJ誌から
抗菌薬使用者から耐性菌が分離されるリスクは1年持続

 プライマリケアにおいて抗菌薬を処方された尿路感染症呼吸器感染症の患者から耐性菌が分離されるリスクは、治療後12カ月後も持続している―。そんなメタ分析の結果を、英Bristol大学のCeire Costelloe氏らが、BMJ誌2010年5月22日号に報告した。

 プライマリケアにおいては、耐性菌の存在が感染症の治療を難しくしている。その一方で、プライマリケアは、いまだに抗菌薬の処方が減らない現場でもある。

 これまで、抗菌薬曝露と耐性菌出現の関係は集団レベルで調べられてきた。著者らは、患者一人一人のレベルで耐性菌の出現リスクを調べ、得られた情報を提供することにより、抗菌薬処方を減らせないかと考えた。だが、個人レベルで抗菌薬処方と耐性菌分離について調べた質の高い研究はわずかしかなかった。そこで、著者らは、初めての系統的レビューとメタ分析を行うことにした。

 プライマリケアで抗菌薬の処方を受けた患者からその後分離された細菌が抗菌薬耐性を示すリスクを、患者レベルで定量的に報告した観察研究と実証研究を探した。用いたデータベースは、Medline、Enbase、コクランデータベース。

 24件の研究が条件を満たした。対象は成人1万5505人、小児1万2103人で、22件は全身性の感染症の患者を、2件は健康なボランティアを登録していた。19件は観察研究(うち2件は前向き研究、17件が後ろ向き研究)、5件は無作為化試験だった。

 処方されていた抗菌薬は多様で、処方期間も2週間から104週間まで様々だった。

 感染症患者を対象とする22件のうち、7件が尿路感染症、7件が呼吸器感染症、2件が中耳炎、1件が慢性閉塞性肺疾患(COPD)、4件がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症、1件が小児のトラコーマについて研究していた。 

 抗菌薬曝露があった患者から追跡期間中に分離された細菌が抗菌薬耐性を示すリスクを、抗菌薬曝露のない人の場合と比較し、オッズ比で示した。

 細菌性尿路感染症を対象にしていた試験の中で、メタ分析に組み込むに値する質を持っていたのは5件(1万4348人)だった。抗菌薬投与開始から0~1カ月以内に尿路から分離された細菌が耐性を示すリスクをプールしたオッズ比で示したところ、4.40(95%信頼区間3.78-5.12)となった。0~3カ月では2.48(2.06-2.98)、0~6カ月は2.18(1.57-3.03)、0~12カ月は1.33(1.15-1.53)となった。

 細菌性呼吸器感染症に関するメタ分析は、7件の研究を対象に行われた。抗菌薬使用開始から0~2カ月の耐性菌検出のプールしたオッズ比は2.37(1.42-3.95)、0~12カ月も2.37(1.25-4.50)となった。

 MRSAについては、皮膚から分離された細菌の抗菌薬耐性を調べていた3件を対象にメタ分析を行ったが、有意なリスク上昇は見られなかった。

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