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NEJM誌から
腹圧性尿失禁へのスリング手術、恥骨後式と経閉鎖孔式に差なし
1年後の臨床転帰を無作為化試験で比較

 腹圧性(緊張性)尿失禁に対する尿道中間部スリング手術には、恥骨後式(retropubic)と経閉鎖孔式(transobturator)という2通りの術式が用いられている。米Alabama大学Birmingham校のHolly E. Richter氏らは、これらの治療から1年後の臨床転帰に差はないこと、また、発生する有害事象のタイプは異なることを、無作為化同等性試験によって明らかにした。論文は、NEJM誌2010年5月17日号に掲載された。

 尿失禁は、特に女性において深刻な症状だ。女性の尿失禁患者の15~80%が腹圧性尿失禁で、うち4~10%が外科的治療を受けるとの報告がある。

 1996年にUlmstenが開発した恥骨後式tension-free vaginal tape(TVT)手術は、恥骨後隙を通したスリングで尿道の中間部を支えるもので、急速に適用が増えている。一方、経閉鎖孔式スリング手術は、腸、膀胱、血管の損傷を減らすために開発されたアプローチだ。これまでのところ、これら術式の転帰や治療関連合併症について比較した研究はわずかしかなかった。

 そこで著者らは、これら術式の12カ月後の転帰を比較する大規模な多施設試験を実施した。

 21歳以上の女性で、腹圧性尿失禁に対する外科的治療が計画されている患者597人を登録。恥骨後式(298人)または経閉鎖孔式(299人)に割り付けた。 

 主要アウトカム評価指標は、12カ月時の治療成功に設定。具体的には、客観的な基準(ストレステスト陰性/24時間パッドテスト陰性/行動療法、薬物療法、外科的介入を用いた再治療なし)と主観的な基準(質問票を用いた調査で症状なし/3日間の排尿日記に失禁エピソードの記録なし/再治療なし)において治療成功と判断された患者の割合を比較した。同等性のマージンは95%信頼区間が±12パーセンテージポイントの中に入ることとした。

 割り付けられた治療を受けたのは、それぞれ291人と292人だった。これらを対象にper-protocol分析を行った。

 客観的な治療成功は、恥骨後式群が80.8%、経閉鎖孔式群が77.7%で、差は3.0パーセンテージポイントだった(95%信頼区間は-3.6から9.6で同等性が確認された)。

 主観的治療成功は62.2%と55.8%で、差は6.4パーセンテージポイントとなった(-1.6から14.3で両群間に有意差はなかったが、同等性は確認できなかった)。

 客観的な基準と主観的な基準の個々について両群を比較しても、有意差は見られなかった。

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