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研修医制度を廃止したドイツでの就活

2010/06/07
堀籠晶子

筆者の自宅の窓から映したドイツの春の風景。
受験生が「サクラサク」で見せる笑顔は、日本でもドイツでも同じように輝いています。

 ドイツの医学部では「卒業式」といったものはありません。最終の医師国家試験である口頭試問(4人1組で行なわれる)の直後に試験官から合否を伝えられ、合格していた時点で「卒業」となります。口頭試問の日程は受験生によってまちまちなので、「ある日、一斉に卒業する」ということは成り立ちません。

 口頭試問が終わる時間になると、たいていの場合、試験会場に友達や家族が待機していて、合格の報告と同時にシャンパンをあけるなどしてお祝いムードになります。私のときには夫が待っていてくれていて、合格と聞くと「おめでとう!」(「ヘルツリッヒェン・グリュックヴンシュ!」)と喜んでくれました。「長い学生生活がこれで終わった」という実感はまだありませんでしたが、ホッとしたのか少し泣けてきました。

 この後、就職活動を経て、専門医制度の下でアシスタント医としての下積み生活が始まります(後述するように、ドイツでは研修医制度が廃止されています)。

医学部卒業生の就活動向
 めでたく大学を卒業した学生たちの中には、すぐに就職活動を始める人もいれば、仕事を始める前に、長く厳しい学生生活の疲れを癒すための休暇を取ったり、博士論文を書き上げる人もいて、思い思いの「自由」を謳歌(おうか)します。

 ドイツではどのような就職活動があるのでしょうか。かつて実習した病院に就職するケースはよくあります。また、医師になると毎週郵送されてくる「ドイチェス・エールツテブラット」と呼ばれる雑誌や、病院ウェブサイトの求人欄から職を見付ける方法もあります。

 希望する病院に求人がなくても、願書を提出してアピールするケースもあります。この場合はいくつかの施設に願書を提出して面接の招待を待つことになります。ドイツでも一部の大都市を除いて医師不足が深刻化しており、地方の病院は医師獲得に必死ですから、同時に複数の病院から面接に呼ばれることも少なくありません。

 根強い人気があるのは大学病院です。大学病院には特殊な症例の患者が集まるため、多くのことを学べると思われているのが理由の一つでしょう。また、研究の場を提供されるので、論文を多く発表して教授(プロフェッソーアー)を目指すというキャリア志向の旺盛な就職希望者も殺到します。

 のんびり屋の私は、卒業後に進むべき科を決めかねていました。後に進路を変更することもできるのですが、そうすると専門医になるための修行をまた最初から積まなければなりません。とても大きな選択を迫られている気がしました。そうしているうちに、しびれを切らした大学時代の先輩が「とにかく就職活動を始めなさい」と言って、北ドイツにある病院の内科を紹介してくれました。私は、その紹介をありがたく受け入れることにしました。

著者プロフィール

堀籠 晶子

ミュンスター大学病院(消化器内科・内分泌学教室)・勤務医

上智大学大学院卒業。ドイツ人医師の夫と共に渡独。2004年にミュンスター大学医学部を卒業後、北ドイツにある総合病院の内科にて研修。2010年より現職。休日は、ドイツに点在するお城を散策したり、長く寒い冬にはゆっくりサウナに入ったりして、リフレッシュしています。

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