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家族と離島に赴任する幸せ
新屋 洋平(阿嘉診療所)

2010/06/21

 この4月で、阿嘉島に赴任して3年目になりました。私は自治医大の卒業生ですから、離島への赴任は義務です。ただ、沖縄県の義務年限は、初期研修3年、離島2年、後期研修1年、離島2年、研修1年の計9年が一般的ですが、私は後期研修に入らず、今年も阿嘉島勤務を継続することにしました。理由はいろいろありますが、その中でも一番の理由は「2年で終わるにはもったいない」と思ったことです。

 私は初期研修の時に結婚し、長男をもうけました。阿嘉島には家族3人赴任しましたが、そのときには既に家内が長女を妊娠しており、慣れない島の生活もあってつわりがひどかったため、5月に入ってすぐ長男を連れて里帰りしました。

 それからほぼ1年間独り暮らしの状態でした。結婚4年目にして久しぶりの気楽な独り暮らしでしたが、阿嘉島には飲食店が沖縄そば、タコライスなど軽食を出すパーラー1軒、居酒屋1軒、古民家風Barが1件しかないため、食事は自炊するしかありません。

 パーラーの食事に飽きてしまうと、昼食も自分で作らなくてはいけません。お昼休みは昼食を作って食べるだけでほぼ潰れますし、診察が延長したり急患があれば食べそびれることもしょっちゅうでした。島の青年会に参加したり、研修医が来たら一緒に飲みに行ったりと楽しいことも多いのですが、他の人には家族や職場の親しい同僚がいるのに、自分には仕事の愚痴を話せる人さえもいないのは寂しいものでした。

連載の紹介

離島医師たちのゆいまーる日記
沖縄県の離島診療所で働く、出身県も経験年数もさまざまな10人の医師が、診療だけにとどまらない日々の生活をつづります。「ゆいまーる」とは沖縄方言で相互扶助の意味。「ゆいまーるプロジェクト」は沖縄県の離島で働く医師たちが集う組織です。現在の執筆者は。「こちら
「ゆいまーる日記」が電子書籍になりました

 2009年から3年間、沖縄の離島で働く若い先生方に持ち回りで執筆していただいた「離島医師たちのゆいまーる日記」。連載のうち、選りすぐりの60本を再編集の上、電子書籍にまとめました。離島で1人で働く医師にはどのような役割が求められるのか、休みは取れるのか、家族はどうなるのか、島の人たちとの関係はどうなのか――。現場の話がぎゅっとつまった書籍となっています。

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