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【新薬】ソリリス点滴静注300mg
エクリズマブ:発作性夜間ヘモグロビン尿症の特効薬

2010/06/17
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

 2010年6月14日、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬エクリズマブ(商品名:ソリリス点滴静注300mg)が発売された。同剤は、4月16日に製造承認を取得している。効能・効果は「発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制」であり、通常、1回600mgから投与(点滴静注)を開始する。

 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、造血細胞の後天的遺伝子変異により、補体による血管内溶血が起こる希少血液疾患である。症状としては、ヘモグロビン尿、貧血による全身倦怠感、動悸、息切れなどが生じる。20~60歳代まで満遍なく発症し、男女比はほぼ1:1である。1998年の調査では、わが国の有病者数は430人と推定されている。

 PNHに対する治療では、骨髄移植が有効であることがわかっているが、ほかには、輸血やステロイド剤投与などの対症療法しかないのが現状だった。

 今回、発売されたエクリズマブは、ヒト補体(C5)に対して高い親和性を示すヒト化モノクローナル抗体である。補体(C5)の作用を抑制することで、赤血球の血管内溶血を抑制する。海外においては、2007年3月に米国で承認されて以降、2009年10月現在、欧州、カナダ、オーストラリアなど世界33カ国で承認されている。また、日本においては、2008年12月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 エクリズマブの発売により、PNHによる溶血を直接抑制できる新たな選択肢(モノクローナル抗体療法)が登場することになり、患者や治療に当たる医療関係者にとって朗報といえるだろう。

 国内臨床試験では、投与したPNH患者の93%に何らかの副作用が認められている。主なものは、頭痛(51.7%)、鼻咽頭炎(37.9%)、悪心(20.7%)などであり、重篤なものとしては、髄膜炎菌感染症やinfusion reactionが認められている。このうち、髄膜炎菌感染症のリスクが上昇すること、薬剤投与中止後に重篤な溶血発作を発現する恐れがあることについては、十分な注意が必要となる。

 なお、本剤では、承認までに実施された国内臨床試験の症例数が限られていることから、販売開始後、一定期間は、使用した全症例で使用成績調査を行うことが義務付けられている。

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