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NEJM誌から
口腔咽頭扁平上皮癌、HPV陽性なら予後良好

2010/06/24
大西 淳子=医学ジャーナリスト

 口腔咽頭癌の一部はハイリスクのHPV(主にHPV-16型)の感染が原因で発生するが、HPV陽性の口腔咽頭扁平上皮癌は予後良好と考えられている。そこで、米Texas大学M.D. Anderson癌センターのK. Kian Ang氏らは、放射線治療に関する無作為化試験に登録された頭頸部腫瘍の患者を後ろ向きに調べて、実際に、口腔咽頭扁平上皮癌において、HPV感染陽性は全生存と無増悪生存の強力かつ独立した予測因子であることを明らかにした。論文は、NEJM誌電子版に2010年6月7日に掲載された。

 これまでに、HPV感染と口腔咽頭癌患者の転帰の関係を報告していたのは、主に小規模な後ろ向きのケースシリーズ研究で、様々な予後予測因子について十分な調整が行われていない可能性があった。そこで著者らは、十分なサイズの集団を対象に質の高い分析を行い、腫瘍のHPVステータスが、生存の独立した予測因子かどうかを明らかにしようと考えた。

 通常、頭頸部腫瘍を対象とする臨床試験に登録される被験者のほとんどが口腔咽頭の扁平上皮癌の患者だ。著者らが今回の後ろ向き研究の対象に選んだのは、放射線治療の分割スケジュール(加速分割照射または通常分割照射)に関する無作為化試験RTOG 0129に登録された患者だった。

 この試験は、18歳以上で遠隔転移のない、ステージ3または4の頭頸部腫瘍患者を加速分割照射(360人)または通常分割照射(361人)に割り付け、高用量シスプラチンとこれら放射線治療の併用の安全性と有効性を比較したものだった。

 登録された721人の60.1%(433人)が口腔咽頭の扁平上皮癌だった。うち74.6%(323人)についてHPV感染状態が評価できた。腫瘍のホルマリン固定標本を対象に、まずHPV-16感染の有無を調べて、陰性と判定された標本についてはさらに12のHPV型(18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68)の検出を試みた。HPVのDNAが検出されたのは63.8%(323人中206人)、それらのうちの96.1%(198人)がHPV-16陽性だった。

 HPV陽性患者は、それ以外の患者に比べ、若く(53.5歳と57.0歳、P=0.02)、喫煙量が少ない(中央値12.2箱・年と36.5箱・年、P<0.001)など、予後良好に関係する要因を多く持っていた。

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