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「なぜドラッグストアでバリウムが必要なんだろう?」

2010/06/23
前田幹広

 初めまして。薬剤師の前田幹広と申します。この連載では、私が集中治療専門薬剤師を目指した軌跡と、アメリカにおける集中治療専門薬剤師の育成システムを中心に書いていこうと思います。第1回目は自己紹介を兼ねて、私が渡米した理由、そしてレジデントとして働くまでの道のりを紹介します。

国際的な仕事がしたかった
 私が渡米を決意したのは、東京理科大学3年生のときでした。周りの友人やクラスメイトが進路を決めていく中、私も卒業後のことを考えていました。日本の薬学生にとって一般的な進路は、大学院、製薬会社、調剤薬局、ドラッグストア、公務員などです。しかし、私にはどれもしっくりこなかったので、思い悩んでいました。

 そんなとき、学校に置いてあった薬学生向けの無料雑誌に、ある記事を見付けました。慶應義塾大学(当時は共立薬科大学)名誉教授の菅家甫子先生が書かれたもので、アメリカの臨床薬剤師になるための留学に関する記事でした。「国際的に仕事ができればいいな」と以前から漠然と考えていた私は記事に引かれ、さっそく菅家先生にアポイントメントを取って相談させていただくことにしました。記事に書かれていた内容についてほとんど無知だった私に、菅家先生は丁寧に留学へのステップや障害などを教えてくださいました。

凝縮されたInternational Program
 アメリカの大学の薬学部に入学して臨床薬剤師を目指すことを決意した私は、まずはシアトル・セントラル・コミュニティ・カレッジに入学して、英語を勉強しながら薬学部に入学に必要な科目を取得していきました。コミュニティ・カレッジは2年制の大学のことで、4年制の大学に入学するために必要な単位を取得するプログラムや2年間で学位を取得できるプログラムがあります。アメリカの薬剤師になる方法については、岩澤真紀子先生が「アメリカの薬剤師になる4つのルート」と題して書かれているので、ここでは割愛します。

 コミュニティ・カレッジで単位を取得し、大学の薬学部を受験する準備を整えました。「教育水準の高い州立大学に入って勉強したい」と思っていた私は、シアトルにあるワシントン大学を中心に受験しました。しかし、基本的に州立大学は、まずは州内の受験生、次いで州外の米国の学生を優先するので、留学生ともなれば入学するのは至難の業です。結局、渡米1年後のワシントン大学受験は不合格に終わりました。

 そこで2年目は、5校の州立大学とフロリダ州にある私立校のノバ・サウスイースタン大学(NSU)を受験しました。NSUは、アメリカ国外の薬剤師免許を持っている人のために、通常は4年間のプログラムを2年半(現在は3年間)に凝縮して学べるInternational Programを設置しています。私立なので学費は高いですが、他大学のPharm.D.課程を卒業するのに4年間かかるのに対して、2年半で済むというのは魅力的でした。結局、NSU以外の大学には面接にも呼ばれず、合格できたのはNSUのみだったので入学の運びとなりました。

著者プロフィール

前田 幹広

メリーランド大学医療センター・集中治療専門薬剤師レジデント

2002年東京理科大学薬学部卒業。2008年ノバ サウスイースタン大学薬学部International Pharm.D.課程修了。テンプル大学病院(臨床薬学一般レジデント)勤務を経て、2009年より現職。趣味はスキー、音楽鑑賞、旅行。

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