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高齢糖尿病患者のQOLには転倒やうつなど老年症候群が強く影響

2010/06/29

シカゴ大学内科のNeda Laiteerapong氏

 高齢の糖尿病患者の健康関連QOLHRQL)には、転倒やうつ、失禁などの老年症候群が、心不全や脚部潰瘍などの大血管/末梢血管関連の合併症と同等以上に強く関連している可能性が新たな研究で指摘された。米シカゴ大学内科のNeda Laiteerapong氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催されている第70回米国糖尿病学会(ADA 2010)学術集会で発表した。

 研究グループは、米カリフォルニアを中心にした米国で最大手の医療法人であるKaiser Permanenteの北部カリフォルニア糖尿病レジストリーに登録された60歳以上の糖尿病患者のうち、「DISTANCE」と呼ばれる糖尿病研究の断面調査に協力した6317人を対象とした。

 重回帰分析を行い、QOLを目的変数、老年症候群の症状・所見と大血管/末梢血管合併症、低血糖疾患を説明変数として関連性を分析した。QOL指標にはSF-8を用いた。SF-8では8つの下位尺度を基に身体関連と精神関連の総合スコア(サマリースコア)を得ることができる。スコアは0-100点(高得点ほど良好)で表す。

 老年症候群の因子は、慢性痛、うつ、前年の深刻な転倒、女性の重篤な失禁など。大血管/末梢血管合併症は四肢末端の切断、少なくとも1眼の失明、前年の心不全、末期腎不全による透析、前年の脚部潰瘍、前年の心筋梗塞発作などとした。

 対象者の平均年齢は67歳、男性が51%、SF-8の身体関連スコアは45点、精神関連スコアは51点だった。老年症候群を有していた参加者の割合は、慢性痛が34%、うつが3%、女性の重篤な失禁が8%、前年の深刻な転倒が1%など。大血管/末梢血管合併症の有症率は、四肢切断が2%、失明が1%、前年の心不全が1%などだった。

 重回帰分析の結果、身体関連QOLに対する老年症候群の寄与率(R2)は男性で0.42、女性で0.41、大血管/末梢血管合併症の寄与率は、男性で0.28、女性で0.30だった。精神関連QOLについては同様に、老年症候群の寄与率が男性で0.20、女性で0.25、大血管/末梢血管合併症の寄与率は男性で0.08、女性で0.12で、男女とも身体関連、精神関連の両方で、老年症候群の寄与率が大血管/末梢血管合併症の寄与率を上回っていた。

 これらの結果からLaiteerapong氏は、「高齢糖尿病患者では、老年症候群が、大血管/末梢血管の合併症と同等以上にQOLを左右している。したがって高齢糖尿病患者のQOL向上には、老年症候群の発見と管理が重要」としていた。

(日経メディカル別冊編集)

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