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糖尿病診断基準に関する調査検討委員会委員長の清野裕氏(関西電力病院院長)

 5月27~29日に岡山で開催されている第53回日本糖尿病学会年次学術集会で、開催初日の27日に、本学会の目玉である糖尿病の新しい診断基準の概要と、本年7月1日に新基準を施行することを発表した。

 今回新しくなる診断基準は前回の基準から11年ぶりに改訂される。最も注目されるのは、診断基準に「HbA1c 6.5%以上」(6.1%[JDS値])が追加されたことだ。

 従来の診断基準では、①空腹時血糖値126mg/dL以上② 75g糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上③随時血糖値200mg/dL以上――のいずれかが再現性を持って認められる場合に糖尿病と診断しており、HbA1c値は補助的な位置付けだった。しかし、HbA1cは検査が行いやすく、慢性の高血糖状態をよりよく反映する指標として有用であることから、今回の改訂で、「補助的な項目」からより上位となる診断基準の1つとして取りあげられた。

 診断基準項目の1つとなったHbA1c値は6.5%以上(6.1%以上[JDS値])とされた。これは、日本のデータを用いて、網膜症の出現頻度や血糖値とHbA1c値との関係を解析した結果から決定した。

 HbA1c値については、日本独自の測定法によって得られるJDS値を、欧米を中心に使われている測定法によって得られるNGSP値に換算する。診断基準の6.5%はNGSP値相当であり、現行の日本の測定法によるJDS値では6.1%となる。今後HbA1cはNGSP値に相当する値として表記するが、HbA1c測定方法はこれまでと変わらず、あくまでJDS値に0.4を足した値をNGSP値として示すことになる。国際標準化作業が行われたことで、JDS値に0.4を足せばNGSP値と同じになることが確認された。

 新診断基準にHbA1c値が加わったものの、糖尿病の診断は血糖値(①空腹時血糖値126mg/dL以上② 75g糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上③随時血糖値200mg/dL以上のうちいずれか)とHbA1c(6.5%[JDS値で6.1%以上])の両方を評価するよう定められており、血糖値は必須のまま変わらない。患者が「HbA1c6.5%以上(6.1%[JDS値]」のみを満たすだけでは糖尿病と診断できず、HbA1cと同時あるいは再検査で血糖値を測定し、血糖値も診断基準を超えて糖尿病型であった場合に糖尿病と診断される。1回目の検査でHbA1c値が6.5%以上(6.1%[JDS値]で糖尿病型と診断され、再検査で再度糖尿病型と診断されても、血糖値が糖尿病型でなければあくまで「糖尿病疑い」にとどまるとされた。

 また、血糖値のみ糖尿病型の場合、糖尿病の典型的症状や確実な糖尿病網膜症のいずれかが見られれば糖尿病と診断される。

(日経メディカル別冊編集)

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