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【第4回】
糖尿病患者に手のこわばり、リウマチでしょうか?

2010/05/19
岸本暢将、田巻弘道、岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科〔成人、小児〕)

研修医 先生、外来患者さんのことで相談をさせてください。

指導医 いいですよ。

研修医 患者さんは50歳女性で職業は事務職、2型糖尿病にてインスリン使用中です。2週間前からの手のこわばりがあり、近医でリウマトイド因子陽性を指摘され、関節リウマチRA)疑いということでコンサルトされました。診察したところ、関節は腫れていないのですが、手指のこわばりは認められました。RAの可能性もあるとは思うのですが、ほかに何か鑑別診断はあるでしょうか?

指導医 中年女性の糖尿病患者さんに起こった手指のこわばりですね。もう少し詳しく患者さんのこと教えてもらってもいいですか?

糖尿病にみられる膠原病類似症状、そのピットフォールとは?
研修医 はい。患者さんは20歳ごろから事務仕事をされていて、座っていることが多く、生活も不規則だったため、肥満になり、42歳時(8年前)に糖尿病を発症しました。コントロール不良のため、2年前からインスリンを使用しています。また、最近、蛋白尿と軽度の糖尿病性網膜症も指摘されています。

 普段、パソコンを1日4~5時間使用していますが、2週間前の日中に、手指の握りにくさ、こわばり感に気付きました。なんとなく手指がはれぼったい感じもあったとのことです。手指以外の関節には特に症状はありません。RAの家族歴もなし。2週間前から時々近医でもらった非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を服用していますが、服用後数時間は若干症状が和らぐものの、すぐに戻ってしまうそうです。

指導医 診察所見では関節の腫脹はなかったんですね。レイノー現象や皮疹はどうでしたか?

研修医 あ、レイノー現象ですか。すみません、聞いていません。

指導医 全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病など、膠原病に伴うレイノー現象(文献1)でも、患者さんは手がこわばる、はれぼったいといった症状を訴えますし、これらの疾患では皮疹は頻度が高い症状です。そのほか、甲状腺機能低下症でもレイノー現象を起こすことがあります。

研修医 そうなんですか。確認しておきます。

指導医 首の症状や、手指のこわばった感じは、第1~第3指に限局していませんか?

研修医 指全体でこわばった感じがするそうです。限局する場合には、どんな鑑別疾患を考えるのですか?

指導医 頸椎疾患による神経根症状や、手根管症候群や肘部管症候群でも手指に限局した症状を呈します。特に手根管症候群は糖尿病関連疾患としても知られており、1指から4指親指側までのしびれ、こわばり感、痛みを訴えることがありますので、確認が必要です。手根管症候群のほかに、糖尿病の患者さんに多い筋骨格系症状を知っていますか?

研修医 以前先生にご指導いただいた強皮症のように手指皮膚が硬くなる糖尿病性手関節症(diabetic cheiroarthropathy、写真1)や、足首や足趾関節のシャルコー関節、足趾の骨髄炎は診たことがあります。

著者プロフィール

本連載は、聖路加国際病院アレルギー膠原病科の岸本暢将(きしもと みつまさ)氏、田巻弘道(たまき ひろみち)氏、岡田正人(おかだ まさと)氏らが中心となり執筆します。

連載の紹介

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