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オリンピックで「医師の品格」について考えた

2010/03/17

 古い話で恐縮ですが、バンクーバー・オリンピックでの国母和宏選手は残念でした。あまりオリンピックに熱くならない私ですが、今回は国母選手には注目していました。国母選手になぜ期待したかといえば、あれだけ日本中からバッシングされた彼が、もし金メダルを取っていたら国民はどういう反応を示すだろうかということです。出発時の“品格”のない格好をきっかけにバッシングされたものの、日本でただ一人の金メダリストとなって帰ってきたら、国民は英雄として迎えていたでしょうか。それとも「日本人として恥ずかしい。メダルの資格なし!」なんてことを言い出していたでしょうか。世論やマスコミがどう動くのか、正直見てみたかったです。

 あのハーフパイプという競技をしっかり見たのも初めてでした。詳しくは知りませんが、スノーボードってスケートボード(スケボー)からの進化したものでしょ。スケボーっていえば、若者たちが深夜に公園の手すりのパイプなんかの上にボードを滑らせて、「イヤッホー」なんて叫びながら遊んでいたやつですよね。ケーブルテレビで海外のハーフパイプの大会を見たことあります。ロックを大音量でガンガン流している会場、スタート地点にはパンティ丸見えのミニをはいた厚化粧のおねえさん。彼女たちにキスしてから競技を開始する姿は、いわゆる“チーマー”の進化系以外のなにものでもありませんでした。その競技がオリンピック競技になったのだから、チーマーの中で一番上手いやつが日本代表になるのは仕方ないのでは。スノーボード選手の“品格”はそうしたチーマーの中で認められた品格ということなのかもしれません。

 オリンピックは世界選手権とは違うので、国民としては出るからには入賞なんかどうでもよくてメダルを取ってほしい。しかし島国の小さな選手が、毛むくじゃらで生まれながら筋骨隆々の大男たちにスポーツで勝るなんて本当に難しいことです。中国みたいに何億人もの中から選りすぐるか、韓国みたいに莫大な国費を投入し選手をとことん鍛えるかをするなら種目によっては対抗できるかもしれません。選手にまず人としての品格を求め、国母選手のような問題を起こさないようにしたいのなら、オリンピック代表の選考時に言葉使い、身だしなみ、一般常識のテストもちゃんとやるべきでしょうね。もっとも、品行方正な選手ばかりになると、チームにとしては弱っちくなりそうですが。

 朝青龍の問題も根は同じような気がします。横綱審議委員会で選ぶとき、あの性格を誰も知らなかったのか不思議です。そもそも国技なのにそのチャンピオンに日本人がなっていない(なれない)のはおかしなことです。いっそのこと相撲を国技からはずしてカーリングくらいのスポーツを国技にすればいいのに。体格も年齢も関係ないカーリングなら、長寿国日本がいつか金メダルを取る日がくるかもしれません。それに、国技といっても私の周りの知り合いに「学生時代は相撲部に入っていた」という人間なんていません。昔も今も、ほとんどの男子は国技ではない野球やサッカーを選んでいます。

著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
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 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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