日経メディカルのロゴ画像

英語のハンディキャップを克服するには

2010/06/17
堀越裕歩

 「何を話していたのか分からない」――。カナダに来て間もないころの私が行なったプレゼンテーションに対するフィードバックでした。日本ではあまりないかもしれませんが、私の職場ではプレゼンテーションに対してはすべての聴衆が評価し、フィードバックされます。つまり、評価するのは上司であり、同僚のフェローであり、自分が指導している医学生なのです。原則、無記名なので、誰が書いたかは分かりません。そのプレゼンテーションに対しては、それなりに準備をして練習も積んだのに、見事な“玉砕”でした。

 日本人が臨床や研究活動のために留学を目指すとき、一つの大きな障壁となるのは言葉でしょう。私の勤めるトロント小児病院に、見学や実習をしにやって来る日本の医学生や研修医からは「どうしたら英語ができるようになりますか?」とよく尋ねられます。「先生はなぜ英語ができるのですか?」と聞かれることもあります。語学の出来不出来には生まれ持った才能が関係するだけでなく、落語家や政治家のように話術のセンスも必要です。日本人でも、語学の才能や話術のセンスがある人はいますが、私はどちらかというと才能もセンスもないので、留学して非常に苦労しました。

 臨床留学では、科によって英会話能力の要求度が違います。私のような小児感染症科のフェローは、コンサルト業務がほとんど。そのため、電話でのコミュニケーションが多くを占め、電話から逃げられません。ですから、「留学していたころ、病院にいるときは電話が鳴っても取らないで済むように、いつも電話から一番遠い席に座るよう心掛けていた」という、日本人の先輩外科医から話を思い出し、うらやましく思うこともありました。
 
非ネイティブに寛容なトロント
 多くの非西洋諸国(アジアやアフリカ諸国など)では、西洋医学教育が英語やフランス語などを使って行なわれています。一方で、日本の医学教育が原則として日本語で行なわれているのはご存知の通りです。

 海外から北米に来ている非ネイティブの多くは、医学教育を通して英語力を身に付けているので、語学で苦労することはさほどありません。ところが私などは、自分の専門領域の英単語は大体は分かりますが、それ以外となるとお手上げで、病院のパソコンでgoogle検索することもしばしばです。

著者プロフィール

堀越 裕歩

トロント小児病院 小児科感染症部門・クリニカルフェロー

2001年昭和大学医学部卒業。沖縄県立中部病院(インターン、小児科レジデント)、カンボジアの小児病院で医療ボランティア、国立成育医療センターの総合診療部等を経て、2008年7月より現職。東南アジアにおける小児国際医療協力・研究、新潟県中越地震の際の緊急支援などに従事。趣味は、スノーボード、野球とサッカー観戦。トロントでもフットサルで活躍中。

この記事を読んでいる人におすすめ