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『検察が危ない』

2010/05/31

 「ヤメ検」という言葉が広く認知されるようになったのは、この数年でしょうか。「ヤメ検」、「やめ検」は、一般的には検事の仕事を辞めて弁護士になった人を指す言葉のようです。

 今振り返ると、私がヤメ検と称される方と初めて言葉を交わしたのは、2006年6月に都内で開催された、母校(高校)の東京同窓会の席上でした。

 2006年は、福島県立大野病院産婦人科の加藤医師が逮捕された年でした。この同窓会で「医療崩壊阻止のために活動している同窓生です」と紹介された私は、懇親会会場で、大先輩に当たるヤメ検の弁護士さんに「医師不足で苛酷な労働環境の中、精一杯業務を行った医師を、結果が悪いからと、逃げも隠れもしないのに逮捕するのは理不尽ではないですか」と訴えたのです。

 その問いに対するこの弁護士の答えは、こうでした。「われわれ検事は、たとえ間違って起訴してしまったとしても、罪に問われない。現在の医師の逮捕には問題がある。気の毒だと思う」。私もよほど印象に残っていたのでしょう、しっかりとこの言葉をメモしていました。

 当時、加藤医師の逮捕で気が滅入っていた私は、この大先輩の言葉に少し救われる思いをしました。しかし、その後も、繰り返し報道される民主党小沢一郎氏の政治資金問題に関する検察のあり方や、あたかも戦中のように足並みをそろえて政治家を糾弾する大手メディアの論調は大変気になっています。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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