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ハーバード学生から見た日本と日本人

2010/02/12

昨年のJTでは参加者が囲炉裏を囲みました。

 今回、日本を体験してもらうジャパン・トリップ(JT)を企画するに当たり、HSPH(ハーバード公衆衛生大学院)の学生全体へ、日本から何を学びたいか、日本についての印象などを昨年10月にアンケートした結果が面白かったので、ご報告します。回答者数は25名でしたが、日本のHealth care system(医療システム)が相当優れたものと認識されていること、文化的な背景もhealth outcome(健康の指標)にかなり影響していると認識されているということが分かりました。

 日本から何を学びたいか、については、「医療システムと、文化がどのように健康に結びついているのかを知りたい」という希望が大半でした。「地震に対する非常時の備え」「低い医療費でなぜサービスの質を保っているのか」「文化が長寿に与えるインパクトは何か」「家庭で高齢者を介護していると聞くが、公的なサポートはどのようになっているのか」「どのように、経済格差や都市と地方との格差を防いでいるのか」「何が日本をこんなにユニークで効率的な国にしているのか」という、私たちが考えさせられる質問もありました。

 昨年までの報告書を読むと、JT参加前と後では、参加者の日本へのイメージが驚くほど変わり、「私、日本が大好きになったわよ。1週間じゃ足りなかったから、また日本に行くわ」と感動しながら語る学生たちに、JT実行委員みな、疲れが吹き飛んだそうです。校内でも、「Japan Trip」という言葉をあちらこちらで耳にし、授業中に、日本で見た自動車会社について積極的に発言する者、友達や教授たちに、このTripを通じて経験したこと、感じたこと、考えたことを熱っぽく語る者が続出しました。JT実行委員と参加者とはかけがえのない友人となり、帰国後自宅に招待して、自国の料理をふるまってくれた参加者もいました。

 今までJTに参加した方々からのアンケート結果から得た日本人論・日本論はこのようなものです。

【良いところ】
・エレクトロニクス、自動車、ハイテク、建築、アニメなどの各分野においてグローバルで圧倒的な存在感を誇っているのは知っていましたが、日本の方はとても親切で礼儀正しく、街は非常にきれいで、とてもすばらしい国だと思いました。

・ 日本は、生活しやすいように気配りが暮らしの隅々に行き届いている国だと思いました。例えば大きな駅などは、車を降りてから改札を通るまで雨に濡れなくて済むように設計されています。また、買い物をしたときに袋を持つ指が痛くならないように、取っ手の紐にやわらかい素材を巻いてくれたことにとても驚きました。

・ 世界はもっとこの日本という美しい国、その文化、人々、歴史や未来から、多くを学ぶべきだと思いました。日本という国がこの世界に存在することをとてもうれしく思います。

・日本の伝統的な調理は美味しさだけでなく、どうやったら、(同じ材料を使って)もっとも栄養価を高く摂取できるかという点まで考えられている。

・現代的な加工食品と伝統的な日本の食べ物とを比較したお話は、とても興味深かったです。日本の伝統的な調理には“栄養の社会学”が行き届いていると感じました。

著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

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