ゲフィチニブ(商品名イレッサ)に反応する進行性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象としたフェーズ3試験で、第1選択としてゲフィチニブを用いた患者の無増悪生存期間は、標準的な化学療法を用いた患者の2倍になることが示された。宮城県立がんセンターの前門戸任(まえもんど まこと)氏らが、NEJM誌2010年6月24日号に報告した。
著者らは先に行ったフェーズ2試験で、上皮成長因子受容体(EGFR)のキナーゼ領域に特定の変異を有する進行性NSCLC患者にゲフィチニブを投与すると、奏効率は70%超、無増悪生存期間は9~10カ月という結果を得た。だが、ゲフィチニブ感受性患者において、標準的な化学療法よりゲフィチニブの方が利益が大きいのかどうかは明らかではなかった。
そこで著者らは、EGFRにゲフィチニブ感受性変異を有する患者のみを選び、ゲフィチニブまたは標準的な化学療法のいずれかを第1選択として用いる無作為化試験を行った。
ゲフィチニブ感受性患者の選別には、著者らが開発した高感度かつ特異性も高い方法、すなわち、Peptide Nucleic Acid(PNA)とLocked Nucleic Acid(LNA)を使用したPCR clamp 法を、Smart Cycler II System を用いたリアルタイムPCR で施行、検出するシステムを用いた。
患者登録は日本国内43施設で06年3月に開始された。転移性NSCLC(ステージIIIB、IVまたは術後再発)で、ゲフィチニブ感受性のEGFR変異を有するが、ゲフィチニブ抵抗性の変異は持たない、化学療法歴のない75歳以下の患者230人を登録。1対1でゲフィチニブ250mg/日、または、標準的な化学療法であるカルボプラチン-パクリタキセルに割り付けた。ゲフィチニブは、(1)進行が見られるまで(2)投与中止が必要な有害事象が現れるまで(3)同意の撤回まで―のいずれかのタイミングまで投与を継続。化学療法は少なくとも3サイクル実施した。
有効性の評価にはRECIST基準を用いた。
主要エンドポイントは、無増悪生存期間、2次エンドポイントは全生存期間、奏効率、有害事象などに設定。
200番目の患者を登録してから4カ月後に予定されていた中間解析は、200人のデータを対象に09年5月に行われた。無増悪生存期間の中央値は、ゲフィチニブ群10.4カ月、化学療法群5.5カ月、化学療法と比較したゲフィチニブの進行または死亡のハザード比は0.36(95%信頼区間0.25-0.51、P<0.001)となった。この結果に基づいて、試験は早期中止された。
データ収集を終了した09年12月までの追跡期間の中央値は527日、ゲフィチニブ治療期間の中央値は308日となった。化学療法群は中央値4サイクルの治療を受けていた。
海外論文ピックアップ NEJM誌より
NEJM誌からゲフィチニブを第1選択で用いた場合の無増悪生存期間は化学療法群の2倍ゲフィチニブ感受性の非小細胞肺癌患者を対象とした試験結果
2010/07/09
大西 淳子=医学ジャーナリスト新規に会員登録する
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