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NEJM誌から
男性の更年期障害の定義とは?
診断の指標はテストステロン値と性機能にかかわる3症状

 男性において、加齢によるテストステロンレベルの低下がどのような臨床症状をもたらすかについては議論がある。英Manchester大学のFrederick C.W. Wu氏らは、遅発性性腺機能低下症の定義を明らかにするために、一般中高年男性の血清テストステロン値とさまざまな症状の関係を調べた。その結果、「総テストステロン値が3.2ng/mL未満、遊離テストステロン値が64pg/mL未満で、早朝勃起不全など3つの性的な症状が存在すること」が最も基本的な定義になることを示唆した。論文は、NEJM誌電子版に2010年6月16日に報告された。

 日本Men's Health医学会では、加齢男性性腺機能低下症候群と呼ばれる遅発性性腺機能低下症を、男性の更年期障害ととらえている。

 遅発性性腺機能低下症には「特定の症状と血清テストステロン値の低下に特徴付けられる加齢に伴う臨床的、生化学的な状態」という定義が既に存在するが、著者らは、この定義があいまいであるにもかかわらず、テストステロン補充療法の適用が増えていることを問題視した。中高年男性のテストステロン欠乏症の実態は明確になっておらず、症状のない一般中高年男性のテストステロン値に関する情報もほとんどない。テストステロンがどのレベルまで減少すると臨床症状が現れるのかも不明だ。

 そこで著者らは、一般中高年男性を対象に、テストステロン低値に関連する臨床症状を分析し、症状とテストステロン値の関係に基づくより明確な遅発性性腺機能低下症の定義を確立しようと考えた。

 欧州男性加齢研究(EMAS)に参加したイギリス、ベルギー、スウェーデン、エストニア、ポーランド、ハンガリー、イタリア、スペインの8施設で40~79歳の男性3369人(平均年齢59.7歳)を登録。このうち、下垂体または精巣の疾患の患者や、それらの機能に影響を与える薬剤または性ホルモンのクリアランスに影響する薬剤を使用している患者150人を除外し、残りの人々を無作為にトレーニングセット(1610人)と確認セット(1609人)に分けた。

 トレーニングセットを対象に、症状とテストステロン値の関係を調べ、確認セットを対象に得られた知見を確認するという方法で分析を進めた。

 総テストステロン値は、朝、空腹時に採取した血液標本をガスクロマトグラフ質量分析して求めた。遊離テストステロン値はVermeulenの公式を用いて算出した。総テストステロン値の平均は4.8ng/mL、遊離テストステロン値の平均は84pg/mLだった。

 全員に健康診断を行った。質問票を用いて一般的な健康状態、性的な状態、身体的な状態、心理的な状態に関するデータを収集、身体能力と認知機能の検査も実施した。その中で、男性ホルモンの不足に起因する可能性がある32の症状の有無を尋ねた。

 32の症状のそれぞれについて、ロジスティック回帰分析により、総テストステロン値または遊離テストステロン値との関係を評価したところ、以下に挙げる9つの症状について、症状ありグループとなしグループの測定値の間に有意差が見られた:性的な3症状(早朝勃起の減少、性欲減退、勃起不全)、身体的な3症状(ランニング、重い物を持ち上げる、激しいスポーツに参加するなどの精力的な活動が困難、1km超の歩行が困難、膝や腰を曲げることが困難)、心理的な3症状(元気がない、落ち込み、疲労感)。

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