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欧州高血圧学会2010
心筋梗塞発症率にARBとプラセボで有意差なし
ARB論争の火付け役、新たなメタ解析を発表

2010/07/09
編集部

North York General HospitalのMartin H. Strauss氏

 「アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)は心筋梗塞のリスクを増加させるかもしれない(Angiotensin Receptor Blockers May Increase Risk of Myocardial Infarction)」――。こう題され、多くの議論を巻き起こすきっかけとなった論文が、2006年のCirculation誌に掲載された(論文閲読可能)。著者はMartin H. Strauss氏とAlistair S. Hall氏。この2人、第20回欧州高血圧学会(6月18~21日、開催地:オスロ)では、対象者を15万例超に増やした新たなメタ解析を発表した。

 その結果は、心筋梗塞のリスクはARBとプラセボで有意差がなく、ARB以外の降圧薬に比べると増加していたというものだった。「われわれはエビデンスを提供する。これに基づいて皆で議論してほしい」と、ポスター発表を担当したStrauss氏(North York General Hospital、カナダ)は強調した。

 今回のメタ解析で同氏らは、ARBが用いられ、死亡、心筋梗塞ないしは脳卒中が評価項目とされていたすべての無作為化比較試験を対象にした。試験の規模や期間は問わなかった。

 まず心筋梗塞のリスクについて、ARBとARB非投与を比較した8件のPROBE(非盲検化)試験(160イベント/1万1221例)をメタ解析したところ、ARB群における心筋梗塞のオッズ比(OR)は0.81(95%信頼区間[95%CI]:0.59-1.10)で、有意ではなかったが低下傾向を認めた。

 プラセボと比較した二重盲検試験16件(3967イベント/9万3219例)を対象にしたメタ解析でも、結果は同様だった(ARBのOR:0.95、95%CI:0.81-1.10)。これら24試験を合わせても、ORは0.96(95%CI:0.91-1.03)だった。

 「ARB群の血圧は、ほとんどの試験で対照群よりも有意に低かった。にもかかわらず心筋梗塞の有意な低下は観察されなかった」と、Strauss氏は指摘した。
 

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