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NEJM誌から
CKD患者の透析開始は遅めでも問題なし

 ステージ5の慢性腎臓病CKD)の患者が透析を開始するタイミングは、転帰に影響を与えるのだろうか。オーストラリアSydney大学医学部のBruce A. Cooper氏らがこのほど行った無作為化試験で、推定糸球体濾過量(eGFR)値が7.0mL/分/1.73m2以下になるまで、または透析の必要性を示す症状が現れるまで開始を待っても、死亡または転帰悪化のリスクは上昇しないことが明らかになった。論文は、NEJM誌電子版に2010年6月27日に掲載された。

 長期にわたって透析を続ける患者が増え続けている。理由の1つは、以前より早い段階で透析が開始されるようになったことにある。これは、いくつかの観察コホート研究やケースコントロール研究の結果、早期開始が患者の生存、QOLに利益をもたらすことが示唆されたことがきっかけだ。しかし、それらの研究の質は十分ではなかった。また、透析を早期に開始した患者と遅れて開始した患者を比較した無作為化試験はこれまで行われていなかった。

 そこで著者らは、オーストラリアとニュージーランドの32カ所の医療施設で、透析開始時期の生存への影響と、心血管イベント、感染、透析の合併症に対する影響を調べる無作為化試験を行った。

 Cockcroft-Gault式によって計算したeGFRが10.0~15.0mL/分/1.73m2の18歳以上の進行性CKD患者を登録。eGFRが10.0~14.0mL/分/1.73m2で透析を開始(早期開始群)、または、eGFRが5.0~7.0mL/分/1.73m2で透析を開始(遅れて開始群)に無作為に割り付けた。遅れて開始群では、eGFRが7.0mL/分/1.73m2超でも医師の判断で透析を開始可能とした。

 主要アウトカム評価指標は全死因死亡に、2次エンドポイントは、心血管複合イベント(心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、一過性脳虚血発作、新規発症狭心症)、感染イベント(感染関連死亡、感染による入院)、透析の合併症として一時的留置カテーテルの使用、アクセスの感染などに設定。

 2000年7月から2008年11月までの間に、828人の成人(平均年齢60.4歳、542人が男性、286人が女性、355人が糖尿病)を登録、無作為に早期開始(404人)または遅れて開始(424人)に割り付けた。

 追跡期間の中央値は3.59年(早期開始群3.64年、遅れて開始群3.57年)。

 割り付けから透析開始までの期間の中央値は、早期開始群が1.80カ月(95%信頼区間1.60-2.23カ月)、遅れて開始群が7.40カ月(6.23-8.27カ月)だった。

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