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NEJM誌から
頸動脈ステント留置と内膜剥離、イベントリスクはほぼ同等

 脳卒中を引き起こす危険性のある頸動脈狭窄の治療には、ステント留置術内膜剥離術という2つの選択肢がある。米Mayo ClinicのThomas G. Brott氏らは無作為化試験CRESTを行い、これら2つの治療法の周術期および4年後までの安全性と有効性を比較し、どちらを選んでも有意な差はないことを示唆した。論文は、NEJM誌2010年7月1日号に掲載された。

 米国内108施設、カナダの9施設で、2000年12月から08年7月まで、症候性または無症候性の頸動脈狭窄の患者を登録した。組み込み条件は、(1)血管造影で狭窄率が50%以上、(2)超音波検査で狭窄率が70%以上、(3)超音波検査では狭窄率が50~69%だったがCT血管造影法またはMR血管造影法で狭窄率70%以上―のいずれかとした。その後、05年に組み込み条件を強化し、無症候性の患者については、(1)血管造影で狭窄率が60%以上、(2)超音波検査で狭窄率が70%以上、(3)CT血管造影法またはMR血管造影法が適用された患者では狭窄率が80%以上―のいずれかを条件とした。

 条件を満たした患者を、無作為に、ステント留置(1271人)または内膜剥離(1251人)に割り付け、ガイドライン通りに治療を行った。

 神経学的評価(NIH脳卒中スケール、修正Rankinスケール、TIA-脳卒中質問票を使用)、心臓酵素測定、心電図検査を、ベースラインと治療直後、1カ月後、その後ほぼ6カ月おきに実施。QOLは、ベースライン、2週間後、1カ月後、1年後にSF-36を用いて評価した。

 主要エンドポイントは、周術期(治療後最大30日まで)のあらゆる脳卒中、心筋梗塞、全死因死亡を合わせた複合イベントと、その後の同側の脳卒中に設定。

 分析対象になったのは、ステント留置群1262人(平均年齢68.9歳)、内膜剥離群1240人(69.2歳)で、これらの患者の割り付けから治療までの日数の中央値は、ステント群が6日、内膜剥離群が7日だった。追跡期間の中央値は2.5年だった。

 周術期の複合イベント発生は、ステント群5.2%、内膜剥離群4.5%でハザード比1.18(95%信頼区間0.82-1.68、P=0.38)と有意差なし。周術期の個々のイベント発生率は、死亡が0.7%と0.3%(P=0.18)、あらゆる脳卒中が4.1%と2.3%(P=0.01)、心筋梗塞は1.1%と2.3%(P=0.03)で、ステント群では脳卒中リスクが、内膜剥離群では心筋梗塞リスクが有意に高かった。

 周術期に非致死的脳卒中を経験した患者と非致死的心筋梗塞を経験した患者の治療から1年後のQOLを比較したところ、心筋梗塞経験者の方が良好だった。

 周術期以降の同側の脳卒中の発生率は両群ともに低く、2.0%と2.4%だった(P=0.84)。

 Kaplan-Meier法を用いて、4年間の複合イベント(周術期の複合イベント+その後の同側脳卒中)発生率を推定した。ステント群7.2%、内膜剥離群6.8%で、ハザード比は1.11(0.81-1.51、P=0.51)と、やはり有意な差は見られなかった。

 患者を症状の有無(P=0.84)、性別(P=0.34)で層別化しても複合イベント発生率に差は見られなかった。だが、年齢で患者を層別化すると、70歳を境に、それより若い患者ではステント留置術の方が、それより高齢のグループにおいては内膜剥離群の方が、複合イベント発生リスクは有意に低かった。

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