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JAMA誌から
テロメア長が短い人は癌罹患と癌死亡のリスクが高い

 染色体の末端にあるテロメアの短縮は染色体を不安定にし、癌化のリスクを高める可能性がある。オーストリアInnsbruck医科大学のPeter Willeit氏らは、ベースラインのテロメア長と、その後10年間の発症と癌による死亡の関係を、一般集団を対象に前向きに調べる初めての研究を行い、テロメア長と癌罹患、癌死亡の間に有意な関係を見い出した。論文は、JAMA誌2010年7月7日号に掲載された。

 対象にしたのは、Bruneckスタディの参加者だ。これは90年に始まった集団ベースの前向き研究で、イタリアBruneckの住民の中から40~79歳の人々1000人を無作為に選び、5年ごとに調査していた。今回の分析は、95年に評価を受け、その時点で癌ではなかった人々のうち、05年までの癌の罹患と癌による死亡に関する情報が得られた787人を対象に行われた(対象となる癌は、メラノーマ以外の皮膚癌を除く全ての癌)。

 ベースラインの白血球のテロメア長は95年に採血された血液標本を対象に、Cawthon氏らが開発した方法を用いて、定量的PCRにより測定した。テロメア長はT/S(テロメアの繰り返し配列のコピー数/単一遺伝子のコピー数)比で表した。

 主要アウトカム評価指標は、95~05年の10年間の癌罹患率と癌死亡率とした。

 10年間に癌を発症したのは、787人中92人(11.7%)だった。罹患率は1000人-年当たり13.3(95%信頼区間10.8-16.3)。最も多かったのは乳癌で12人、次いで胃癌が11人、肺癌と前立腺癌がそれぞれ10人など。

 全員のベースラインのテロメア長(T/S比)の平均は、1.48(1.43-1.54)。癌罹者群の平均は1.12(1.02-1.23)で、非罹患者の1.53(1.47-1.59)に比べ短かった(P<0.001)。

 ベースラインのテロメア長に基づいて登録者を3分した。短いグループ(264人)のテロメア長は0.78(0.76-0.80)、中間のグループ(258人)は1.30(1.28-1.32)、長いグループ(265人)では2.36(2.27-2.45)となった。短いグループの47人、中間グループの32人、長いグループは13人が癌に罹患していた。

 テロメア長が短いことと有意な関係を示す要因を探したところ、年齢が高い、性別男性、糖尿病、身体活動が少ない、高感度CRP高値などが同定された。そこで、これらと、社会的な地位、喫煙歴、飲酒などで調整してCox回帰分析を行ったところ、ベースラインのテロメア長が短いことは、独立した癌罹患の危険因子であることが明らかになった。

 Log e変換したテロメア長の1SD減少当たりの多変量調整ハザード比は1.60(95%信頼区間1.30-1.98、P<0.001)になった。

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