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第1回
グローバルヘルスの変遷と日本の立場

2010/08/03
喜多洋輔(世界保健機関)、江副 聡(国連合同エイズ計画)、鷲見 学(世界保健機関)

 2009年に新型インフルエンザが大流行した際、「世界中の感染症対策に関する陣頭指揮を執る組織」として世界に貢献していた世界保健機関WHO)。感染症対策や災害地での医療行為など、地球規模の保健医療(グローバルヘルス)において様々な課題を解決することが主な役目の機関だ。しかし現在のグローバルヘルスは、WHOだけでは語れない。WHO以外にも、様々な国際機関や民間団体などが登場し、保健の内容も大きく変わってきている。

 一方、財政難や人材不足が原因で、日本のグローバルヘルスにおける発言力が年々弱まっているという現状がある。このままでは日本の得意分野である、保健医療分野で世界に貢献できる機会を失いかねない。もっと国際舞台に立つ日本人を増やし、これまで培ってきた保健に関する知恵や経験の提供を通じて、日本の立場向上を模索する必要があるのではないだろうか。

 そうした思いから、WHOや国連合同エイズ計画UNAIDS)など、グローバルヘルスの関係機関が集中するスイス・ジュネーブ在住の日本人職員有志が集まり、日本の医療にも直結するグローバルヘルスの現状を広く医療関係者にお伝えすべく、本連載を始めることにした。多くの方にグローバルヘルスを理解してもらい、キャリアの選択肢として国際機関を志す人が増えることを期待しながら、タイムリーな話題を約1年にわたって書いていきたい。

グローバルヘルスにおけるWHOの役割

 世界規模で保健医療にかかわる機関は、誕生した時期によって3つに分類できる。「第一世代」は戦後すぐに設立されたWHOや国際連合児童基金UNICEF)、「第二世代」として国際連合開発計画UNDP)など、そして「第三世代」として資金配分機能を持つ世界エイズ・結核・マラリア対策基金世界基金)や国際医療品購入ファシリティUNITAID)などだ。そのなかで、戦後以降、グローバルヘルスの中心だったのが、第一世代のWHOだ。

著者プロフィール

ジュネーブの国際機関に勤務する日本人職員が有志で集まり、持ち回りで執筆していきます。なお、本記事内の意見部分は筆者らの個人的見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

連載の紹介

ジュネーブ国際機関だより
WHO(世界保健機関)やUNAIDS(国連合同エイズ計画)などスイス・ジュネーブの国際機関で日々議論されている世界の保健医療(グローバルヘルス)の課題を、現地の日本人職員がリアルタイムに日本の医療関係者に伝えます。

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