ビタミンDが欠乏している高齢者は、ビタミンDが充足した高齢者に比べて認知機能の低下が有意に早いことが、英Exeter大学のDavid J. Llewellyn氏らの研究で明らかになった。論文は、Arch Intern Med誌2010年7月12日号に掲載された。
米国と欧州に住む高齢者にはビタミンD不足例が多く見られており、市中在住の高齢者の40~100%がビタミンD欠乏状態だとの報告もある。
ビタミンDは骨折や様々な慢性疾患に関係することが知られている。しかし、認知機能の低下とビタミンDの関係を調べた前向き研究はこれまでなかった。
著者らは、血清25ヒドロキシビタミンD低値が認知機能の低下と関係しているかどうかを調べるために、集団ベースのInCHIANTI試験に登録された患者を分析した。
InCHIANTI試験は、老後の障害に関係する危険因子を同定する目的で、イタリアで計1154人を登録、98年から06年まで追跡した。今回は、3年ごとの認知機能の評価を1回以上受けていた858人を分析対象とした。
認知機能は、MMSE、Trail-Making Test(TMT)AとBを用いて、ベースラインと3年後、6年後に評価。MMSEにおいて3ポイント以上低下した場合を認知機能低下と判定した。TMT-AとTMT-Bでは、試験終了までに要した時間が長いほど認知機能が低いと判定されるが、ベースラインと比較した所要時間の延長幅が大きい方から10%に分類された高齢者、または、試験を終了できなかった人々を認知機能低下と判定した。
血清ビタミンD値に基づいて対象者を以下の4群に分けた。重症のビタミンD欠乏症(25nmol/L未満)、ビタミンD欠乏症(25nmol/L以上50nmol/L未満)、ビタミンD不十分(50nnom/L以上75nmol/L未満)、ビタミンD充足(75nmol/L以上)。
ベースラインの認知機能検査では、その時点の血清ビタミンD値が低いほど認知機能が低いことが示唆された。MMSEのスコアは、重症欠乏群が23.7、欠乏群が25.2、不十分群は26.0、充足群は26.3(カイ2乗検定のP<0.001)。TMT-Aの結果は、それぞれ151.8秒、114.9秒、94.2秒、87.2秒(P<0.001)、TMT-Bの結果は239.9秒、219.6秒、188.5秒、180.5秒(P<0.001)だった。
追跡期間中にMMSEにより認知機能低下と判定された高齢者は290人、TMT-Aにより認知機能低下と判定された人は165人、TMT-Bでは275人だった。
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