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Arch Intern Med誌から
プライマリケアで関節液採取なしに痛風を診断するには

 急性の痛風性関節炎の患者の多くは、プライマリケアで診断と治療を受けているが、診断時に関節滑液の分析が行われないことも少なくない。そこでオランダRadboud大学のHein J. E. M. Janssens氏らは、プライマリケア医の診断の精度を調べた上で、関節液採取なしに痛風を診断するための臨床スコア表を作成し、Arch Intern Med誌2010年7月12日号に報告した。

 04年3月24日から07年7月14日まで、オランダ東部のプライマリケア医93人のもとを訪れた、単関節炎で急性痛風性関節炎の疑いが非常に強い患者381人を、症状発現が初回かどうかにかかわらず登録した。医師の診断とは別に、全員を対象に受診から24時間以内に関節滑液を採取した。

 381人の平均年齢は57.7歳、74.8%が男性だった。それらの中で、顕微鏡観察により関節滑液に尿酸ナトリウム結晶が認められ、痛風と確定したのは216人(56.7%)。ただし、受診時に採取された標本が陽性と判断されたのは209人で、7人は追跡中に結晶陽性となったため、その時点で痛風と確定した。

 したがって、プライマリケアで関節液を採取し結晶を指標とする診断を行った場合の感度は0.97(受診時に結晶陽性の209人/結晶陽性の216人)、特異度は0.28(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/追跡終了後も結晶陰性の165人)となった。

 プライマリケア医が関節滑液の分析なしに痛風と診断した患者は328人(86.1%)。医師の診断の陽性予測値は0.64(受診時に結晶陽性の209人/医師の診断が痛風だった328人)、陰性予測値は0.87(医師の診断が非痛風で結晶陰性の46人/医師の診断が非痛風だった53人)。これらから計算すると陽性尤度比は1.3、陰性尤度比は0.1となった。したがって、プライマリケアでの痛風診断の精度は中程度と判断された。

 医師から痛風と告げられた328人を結晶陽性患者と陰性患者に分けてベースラインの特性を比較したところ、有意な差が見られたのは、男性の割合(陽性群は89.5%、陰性群は62.2%)、高血圧(52.6%、30.3%)、心血管疾患(30.6%、14.3%)など。これらの統計学的に有意な要因と、あらかじめ定義した変数を組み込んで、多変量ロジスティック回帰モデルを作成、プライマリケアを訪れる単関節炎患者の尿酸ナトリウム結晶陽性の予測精度=診断精度を、ROC曲線を描いて分析した。

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