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猛るデモ隊、息を潜める病院―G20狂想曲

2010/08/06
堀越裕歩

 2010年 6月 25日~27日、カナダでG8(主要国首脳会議)とG20(20カ国地域首脳会合)が連続して開催されました。G8はトロントから少し北に行ったところにあるハンツビルという保養地で、G20はトロントのダウンタウンに場所を移して行われました。

過激グループも参加する大規模デモ
 世界中のマスコミの注目を浴びるこのような国際会議が開かれるときは、各種デモが行われるものです。そのほとんどが平和的なものですが、中には過激なグループもいるため、様々なトラブルになることもあります。

 今回のデモの参加人数は事前に約1万人と推計されました。万が一、1万人規模の集団が暴徒化して各国のVIPに危害を加えるようなことになれば、カナダの威信にかかわります。

 そのため政府は、G20が開かれる区画を、開催期間中は完全にバリケードで隔離しました。日本で言えば霞が関を完全にバリケードで隔離するようなものです。さらに、近辺の学校や病院などはお休みとなり、地下鉄などの公共交通機関もストップしました。

 しかし、私が勤務するトロント小児病院は、成人を対象とする病院と違って他の病院が代わりに対応するということが難しいため、G20開催期間中も急患を引き受けました。それでも普段に比べると来院数は格段に少なく、閑散としている小児救急センターを見るのは、ここに着任して以来初めてのことでした。

 当院では、開催3か月前から不測の事態に備えて準備が行われました。開催期間中は病院近辺に住むスタッフが優先的にシフトを組んで勤務に当たることになり、郊外から通勤する者は原則、自宅待機になりました。院内のセキュリティレベルは最大限に上げられ、昨年、天皇皇后両陛下が見学に来られたときの厳戒ぶりをほうふつとさせました。医療従事者はIDカードを厳しくチェックされ、病院の出入り口は1か所を除いてすべて閉鎖されました。

著者プロフィール

堀越 裕歩

トロント小児病院 小児科感染症部門・クリニカルフェロー

2001年昭和大学医学部卒業。沖縄県立中部病院(インターン、小児科レジデント)、カンボジアの小児病院で医療ボランティア、国立成育医療センターの総合診療部等を経て、2008年7月より現職。東南アジアにおける小児国際医療協力・研究、新潟県中越地震の際の緊急支援などに従事。趣味は、スノーボード、野球とサッカー観戦。トロントでもフットサルで活躍中。

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