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NEJM誌から
膝靱帯断裂の再建術、早期でなくとも転帰に差なし

 スキーなどで発生することが多い膝の前十字靱帯(ACL)断裂に対する最適な治療法は明らかではない。スウェーデンLund大学のRichard B. Frobell氏らは、リハビリ+早期の再建術実施と、リハビリ+その後必要なら再建術実施という2通りの治療戦略が2年後の転帰に及ぼす影響を比較する無作為化試験を実施した。この結果、両群間の臨床転帰に有意差はなかった。論文は、NEJM誌2010年7月22日号に掲載された。

 ACL再建術は、スポーツの再開を望む活動的な患者などに広く適用されているが、他の治療法と再建術の転帰を比較した質の高い無作為化試験はこれまで行われていなかった。

 著者らは、02年2月から06年6月までに救急部門を受診した18~35歳の患者の中から、急性期(発生から4週以内)のACL断裂と診断された121人の若い活動的な成人を登録、構造化されたリハビリと早期(ACL発生から10週以内)の再建術を実施する群(62人、平均年齢26.3歳)、または、構造化されたリハビリを行い、膝の不安定性が改善されず、pivot shiftテストで陽性、本人が再建術適用を望んだ場合にこれを実施する群(59人、25.8歳)という2通りの治療法に無作為に割り付け、2年間追跡した。

 主要アウトカム評価指標は、膝関節損傷・変形性関節症転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)のサブスケール5つのうちの4つ、すなわち、疼痛、症状、スポーツ・レクリエーション時の機能、膝関連QOLからなるKOOS4のスコアのベースラインから2年後までの変化に設定した。

 KOOSのスコアはサブスケールごとに0~100で表される。0は膝の症状が非常に深刻であること、100は全く問題がないことを意味する。

 2次評価指標は、KOOSのサブスケールのすべて(上記の4つ+日常生活の活動性)、SF-36、Tegner 活動性スケールのスコアなどとし、分析はintention-to-treatで行った。

 リハビリ後必要なら再建の群に割り付けられた患者のうち、23人が割り付けから平均11.6カ月後に再建術を受けていた。残る36人はリハビリのみ実施した。

 2年後、両群共にKOOS4スコアは上昇していた。KOOS4スコアの平均は、早期再建群でベースラインに比べ39.2ポイント、リハビリ後必要なら再建群では39.4ポイント向上しており、ベースラインのスコアで調整した両群間の絶対差は0.2ポイント(95%信頼区間-6.5から6.8、P=0.96)と非有意だった。

 事後解析として、リハビリ後に再建を受けた患者とリハビリのみだった患者、早期に再建術を受けた患者のKOOS4スコアの平均を比較したところ、2年の時点では差がないものの、1年目まではリハビリのみのグループが最も高く、遅れて再建術を受けたグループのスコアが最も低かった。

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