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BMJ誌から
気温が1度下がると心筋梗塞リスクは2%上昇

 気温の変化は、心筋梗塞のリスクに影響を与えるのだろうか。心筋梗塞による入院の関係を調べた英London大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らは、気温の低下が心筋梗塞リスクを上昇させること、一方で気温上昇と心筋梗塞の間には有意な関係はないことを明らかにした。論文は、BMJ誌2010年8月12日号に掲載された。

 気温の変化と死亡率の関係を調べた研究は複数ある。米国の研究者たちは、横軸を気温、縦軸を全死因死亡とすると、カーブはU字型になると報告している。気温の変化は心血管疾患死亡にも影響を与えることが示されているが、心筋梗塞発症と気温の関係を調べた質の高い研究はほとんどなかった。

 そこで著者らは、気温と心筋梗塞による入院の関係を調べる目的で時系列回帰分析を行った。分析対象になったのは、イングランドとウェールズの15大都市圏在住で、03年1月から06年12月に心筋梗塞で入院した患者。イングランドとウェールズの全ての病院の情報を収集しているMyocardial Ischaemia National Audit Projectから、ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞、トロポニン陽性急性冠症候群と診断された入院患者8万4010人(年齢の中央値は70歳)の詳細な情報を得た。

 気温に関する情報はBritish Atmospheric Data Centreから入手した。1日の最高気温と最低気温の平均を算出。相対湿度も求めた。

 交絡因子候補として、大気汚染の程度(粒子状物質PM10の濃度を指標とする)や、ウイルス性疾患(A型インフルエンザ、RSウイルス)の流行状況等のデータも収集した。

 主要アウトカム評価指標は、気温が1度変化することによる心筋梗塞リスクの変化に設定。影響は最長28日遅れて現れると考えた。

 15の都市圏の03~06年の平均気温は9~12度の間だった。1日の平均気温は-3度から27度の間だった。

 気温が上昇または低下してから0~1日後、2~7日後、8~14日後、15~21日後、22~28日後の心筋梗塞の相対リスクを、暦時間、湿度、曜日、国民の祝日、インフルエンザの流行、RSウイルス感染の流行、PM10濃度、オゾン濃度で調整して求めた。

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