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【国際モダンホスピタルショウ2010】シスコシステムズ、医療現場でのユニファイドコミュニケーションの可能性を披露

2010/07/30
増田克喜

 シスコシステムズは、「Connected Health」をヘルスケア分野のビジョンとして掲げている。これまでエンタープライズ分野で培ってきたユニファイドコミュニケーション技術を活用し、新たな遠隔医療ソリューションや病棟業務支援のための院内IPコミュニケーション基盤をホスピタルショウで披露した。今回の出展の中心である遠隔医療相談基盤の「Cisco HealthPresence」とIPナースコールソリューション「NurseConnect」は、医療現場におけるユニファイドコミュニケーションの新たな可能性を示すもので、多くの来場者の関心を呼んだ。


●情報共有とコミュニケーション環境により地域住民の健康保持・増進に寄与

Cisco HealthPresenceの機器構成。ホスピタルショウではコンティニュア対応血圧計を採用して相互運用性を向上させた

 

 
 
 シスコシステムズのメインの展示は、同社の遠隔医療技術プラットフォームである「Cisco HealthPresence」を用いて、遠隔地にいる医療スタッフと高度な健康相談をするシステム。Cisco HealthPresenceは、テレプレゼンスとユニファイドコミュニケーションの技術を融合し、離れた場所にいる人に病院に診察に訪れるのと同じような医療サービスを提供する遠隔医療技術プラットフォームである。「テレプレゼンス」(Telepresence)はHD(高精細度)対応の大型ディスプレイを使ったビデオ会議システムで、高品質な映像や音声でコミュニケーションできる。健康相談者の顔色など対面診察と同様な対応ができるように、こうした映像環境を適用しているという。

 Cisco HealthPresenceは、このビデオカメラ付属の大型ディスプレイ、IP電話、PC、撮影用ハンディビデオカメラ、自動血圧計などが接続されている。これらの機器が各データのエンコード(符号化)とデコード(復号)して双方向通信するCODEC装置につながっており、相談相手の看護師と映像や血圧データなどを共有しながらコミュニケーションする。回線はNTTのNGNサービスを利用する。

 同社は、このシステムを用いて今年3月からツルハ(本社札幌市)と共同で、北海道大学の「Health Network System」プロジェクトに参画。地域住民の健康保持と増進に寄与する、遠隔健康相談システムを設計するための実証事業を行ってきた。ホスピタルショウでも、北海道大学の大学院保健科学院とネットワークで結び、同学院の保健師が相談相手となってデモンストレーションを実施していた。

 実証実験では血圧計とPCはUSBによる有線接続で行われたが、ホスピタルショウのデモではコンティニュア対応の血圧計(A&D製)を採用し、同じくコンティニュア対応であるインテルのMCA(Mobile Clinical Assistant)準拠のタブレット型モバイルPC(パナソニック製)を用いて、無線接続による柔軟性の高い環境を構築した。

高精細な大型ディスプレイ、PC、バイタル測定機器などによるCisco HealthPresence。遠隔地の看護師等と高度な健康相談が可能になる

 Health Network Systemプロジェクトは、Cisco HealthPresenceを調剤薬局併設のツルハドラッグ4店舗に設置し、各ドラッグ店舗に訪れた顧客が健康相談を行うもの。相談相手は、北大保健科学院の専門性の高い看護職スタッフとツルハ本社の介護ケアマネージャーが担当した。相談者のプライバシーを守るため、各店舗の相談ブースは壁で囲み、VPNを構築して通信の内容漏れも防いだ。

 実証事件は、ドラッグストアなどの店舗網を活用して、「どこでも」「誰でも」利用できる健康相談を提供することで、地域保健活動の推進、市民・患者のメタボ対策などの健康維持・健康増進に対する意識向上、医療ヒューマンリソースの有効活用に加えて、遠隔健康相談システムによる受療行動の変化を分析して保健・医療との連携フローを明確にする、などの目的があるという。

 一方、シスコシステムズの目的は、ヘルスケア分野におけるビジョンとして同社が掲げている「Connected Health」の取り組みの一環として、「これまでユニファイドコミュニケーション技術で培ってきた基盤を、医療・健康・介護・福祉分野においてさらに発展させていくこと」(シスコシステムズ システムエンジニアリング&テクノロジー公共・医療担当ソリューションズアーキテクト 岩丸宏明氏)だという。

 また、岩丸氏はこのプロジェクトが遠隔健康相談のビジネスモデルを確立するための実証実験の意味合いもある、と指摘する。「ドラッグストアチェーンに協力してもらった背景には、健康・介護相談が来店者にどれだけ浸透し、それによってOTC薬品やサプリメント類、あるいは介護用品の売上げにどれだけ寄与できるかを探る目的もあります。将来は、健康相談者を即座にプロファイリングして、相談中の画面の一部をデジタルサイネージとして利用し、その収益を運営費として展開できるようなビジネスモデルを確立していきたい」(岩丸氏)と述べる。

●無線IP電話とナースコールシステムが連動したメッセージシステムに注目

高機能なナースコールシステムと無線IP電話の連動により、看護スタッフはグラフ化されたバイタル情報などリッチな情報をラウンド中に受け取ることができる

 シスコシステムズのブースで遠隔健康相談システムと同様に来場者が高い関心を示していたのが、同社の無線IP電話やユニファイドコミュニケーションシステムとケアコムのコンピュータ化されたナースコールシステムの連動による、緊急メッセージ通知システムだ。

 ケアコムのナースコール機能を中心とした病棟業務支援システム「NiCSS」は、電子カルテ・オーダリングシステムや看護支援ソフトと連携して、患者情報を中心に様々な情報を保持している。従来は、PHSと連動してナースコールがあった際に緊急メッセージを端末に送信する仕組みだった。しかし、端末性能の限界から、患者氏名や病室番号、アラーム内容などは、数行のテキスト情報としてしか送信できなかった。それを無線IP電話に置き換えることで、高度なナースコールシステムに集まる様々な情報を、看護スタッフに直接伝えることが可能になる。

 例えば、ナースコールの際に、生体情報モニターと連動してハートレートやSPO2 異常、バイタル情報などをグラフ化して情報送信できる。そうした情報を看護スタッフが持つ無線IP電話に転送することで、すぐに処置器具を持参すべきか、担当医師に転送して指示を仰ぐべきかなど、次のアクションへの時間短縮や看護スタッフの移動時間短縮が可能になり、業務の質・効率性の改善が期待できる。

 デモンストレーションでは、ケアコムのNiCSS、SIPによる音声通話とデータ、画像情報等の送出を行う同社のIP-Exchanger(参考出展)、シスコシステムズの無線IP端末、ユニファイドコミュニケーションシステムの呼処理コンポーネントなどで構成されたナースコール通知システムを活用。無線IP電話に、漢字による患者属性情報、グラフ化されたバイタル情報の送信などを行い、病棟コミュニケーション環境の進化を提案した。

(増田克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)




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