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【国際モダンホスピタルショウ2010】日本ユニシス、クラウド技術を採用した次世代統合医療情報基盤を披露

2010/07/27
増田克喜

 日本ユニシスは、次世代統合医療情報基盤「UniCare-EX」をホスピタルショウで披露、同基盤の提供を開始したことを発表した。各部門システムから必要な情報をリアルタイムに取得し、クラウド技術を採用した電子カルテシステムを提供するもの。このクラウド型医療情報基盤によって、医療連携促進への取り組みを強化するとともに、院内医療情報システムへの適用も提案していくという。

●Web公開方式を発展させたクラウドシステム

各医療機関の診療情報の所在管理のみを行い、情報を統合・提供するUniCare-EX。データセンターに構築されたシステム基盤をクラウドサービスとして利用する

 これまで提供されてきた医療連携システムは、多くがWeb公開方式かデータセンター公開方式のどちらかを採用している。前者は、主に診療情報を提供する医療連携の中心となる中核病院がWeb形式の公開サーバーを立て、連携先医療機関がネットワークを用いて診療情報を利用する。後者は、行政機関などが設置するデータセンターに地域の医療機関の診療情報を集約するシステムを構築し、各医療機関が共同利用する。現状では、システム構築コストが低く運営上の問題が比較的少ないWeb公開方式の拡大しつつあるが、クラウド技術を採用したUniCare-EXもこのWeb公開方式を発展させたものだという。

 UniCare-EXは、ネットワーク経由で機能を提供するクラウド型診療情報提供基盤である。電子カルテシステム(診療録、患者、医療行為のステータス情報を統合するシステムでオーダリングや病棟支援機能などを含まないもの)を、日本ユニシスがデータセンターに構築・運用する。クラウド型電子カルテシステムに公開する各種情報は、医療連携を行うそれぞれの医療機関の医療情報システムや部門システムからネットワーク経由で取得して、統合・提供する。ただし、取得した情報をUniCare-EX自体にコピー・蓄積はせず、それぞれの医療情報システム、部門システムにある情報の所在管理のみを行う。

 日本ユニシス 社会公共システム本部SIシステム第四統括プロジェクト第二プロジェクト室長 竹中暢氏は「UniCare-EXの主要なコンセプトは、診療データをコピーせず、オリジナルデータのみを利用すること。医療現場からすると、常に最新のデータが必要です。コピーによる情報鮮度のタイムラグが、医療過誤を招く恐れがあるからです。そのためには、最新のオリジナルデータを取得して提供することが重要です」と解説する。

 続いて竹中氏は「公開するために情報をコピーするには、その処理とデータ領域確保のためのシステムリソースが必要になります。従って、データの蓄積量が増大するにつれ、ディスク装置の増加やレスポンスを確保するためのシステム増強が必要になります」とコスト面にも言及する。UniCare-EXは、オリジナルデータの所在をクラウドシステムで管理・統合する基盤を提供で、このような問題は起こらないという。

●公開サーバー不要、データ実体管理なしで情報漏えいのリスクなし

 会場内のセミナーステージで行われたプレゼンテーションでは、高速なトランザクション処理、シングルデータモデル、ネットワーク負荷を考慮した通信技術など、UniCare-EXの5つの主要技術が紹介された。同時に、Webブラウザを基本インタフェースに選び、現場の業務に即した画面展開をコンセプトとした操作の容易さ、各医療機関が地域医療連携用の公開サーバーを構築する必要がないこと、データの実体を保管しないことで不正アクセスなどによるデータ漏えいのリスク回避が可能であること、などのメリットが来場者の注目を集めた。

ドクター用画面は二号紙を主体として、所見やオーダー、実施情報のステータスを表示、更新ができる

 UniCare-EXは地域医療連携を想定したシステムだが、各部門システムのデータを統合して、各医療スタッフに提供する基盤としても活用できるという。同システムで提供する画面インタフェースは、所見やオーダー内容などを表示する二号紙を主体としたドクター用画面、病棟看護師の業務支援を行う入院画面などがあり、それぞれの医療スタッフの現場の業務に適した情報を提供する。データセンターで運用するクラウドシステムが、各医療行為が発生する時点で実施情報を管理する部門システムから必要なデータを取得し、リアルタイムに業務画面上に提供する。

 これまでの日本における電子カルテシステムは、オーダリングシステムから発展したもので、電子診療録の機能を中心にオーダーエントリーや各部門システムの情報を統合参照する構成になっている。UniCare-EXは、それら各機能のデータを統合・参照・更新する仕組みをクラウド技術によって提供する。ただ、地域医療連携基盤として活用するためには、ダイレクトに各医療機関のシステムから情報を取得するための公開情報コントロールをどうするか、従来の各部門システム情報の持ち方をどうすべきかなど、実際に構築・運用するための課題をクリアする必要がある。クラウド技術が医療情報システム分野でも活用可能であり、クラウドならではのメリットがあることを示したことは、評価されるべきだといえるだろう。

(増田克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)




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