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【国際モダンホスピタルショウ2010】チーム医療や地域医療連携を支える医療情報システムの先端技術が一堂に

2010/07/22
増田克喜

電子ペーパーを利用したシステムでは、富士通の患者案内システム「NAVIT」、SIIの多様な表示システム(写真)などが出品。電子カルテシステムや管理システムと連携して、患者ごとにきめ細かい情報表示を実現できることを訴えた

 医療・介護関連の機器や情報システムの総合展示会「国際モダンホスピタルショウ2010」(主催:日本病院会、日本経営協会)が7月14日から3日間にわたり、東京ビッグサイトで開催された。37回目となる今回は「いのちの輝きを!明日に架ける健康・医療・福祉」をテーマに、地域医療ネットワークの現状や課題にフォーカスしたセミナーや医療情報システムベンダーの先端技術の紹介などが行われた。来場者は3日間で7万9150人(主催者発表)。昨年を約3000人上回った。

●ITを活用したチーム医療と地域医療がメインテーマ

 今回は、「輝かそう!チーム医療・地域医療ネットワークの未来」というテーマの主催者企画の影響もあり、地域医療連携を中心に据えた展示が目立った。この企画では、脳卒中地域連携クリティカルパスの運用を先駆的に実施している香川県の例、地域の10施設の基幹病院と125施設の連携先医療機関で診療情報を共有し6年間で約1万1500件の連携実績がある長崎地域医療連携ネットワークシステム「あじさいネットワーク」、岩手県遠野市で運用されているインターネットとパソコンや携帯電話を利用した周産期医療や健康増進を管理する電子手帳を使った医療連携事例、などが紹介された。

 医療情報システムベンダーのブースでも、医療連携ネットワーク関連の展示・紹介が多数見られた。目立ったのがNTTグループで、地域医療連携モデルとして千葉県立東金病院と共同開発した「慢性疾病管理プログラム」の運用をはじめ、NGN(次世代ネットワーク)を基盤にした医療連携基盤を中心に展示を行った。このほか、厚生労働省の電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)に対応して「病病連携」の機能拡張をした富士通の「HOPE/地域連携 V3」、地域に分散した診療情報の所在地と患者IDのひも付け管理を統合・共有するNECの地域医療連携ネットワークサービス「ID-LINK」、今回のホスピタルショウに合わせて発表した日本ユニシスのクラウド型医療連携ソリューション「UniCare-EX」などが、多くの訪問者の注目を集めていた。

 電子カルテシステム関連では、NECの100床以下の小規模病院向け電子カルテシステムをネットワーク経由でサービス(SaaS)提供する「MegaOakSR for SaaS」が来場者の注目を集めた。カルテ2号紙を中心とした「診療機能」、処方・注射・検査オーダーなどの「オーダー機能」、入院患者の経過表や看護計画・指示実施管理等の「病棟機能」などの基本機能をノンカスタマイズで提供する。システム導入・運用コストが従来のSI型に比べて5年間で最大30%低減可能であること、医療機関でシステムのスペースや運用要員が不要であることなどが、注目を集めた理由である。

 富士通は、中・大規模病院向けの「HOPE/EGMAIN-GX」の新機能として自科検査ソリューション「HOPE/EGMAIN-GX Port」(仮称)を初披露した。同ソリューションは、①超音波検査や血液ガス検査などの画像や数値データ、デジタルカメラの画像、心電図記録紙など紙で存在する検査記録を電子カルテシステムに取り込み、電子カルテの記録として管理できる、②自科検査などの運用に合わせ、検査オーダーを発行することなく検査を実施して記録に残すことが可能で、実施情報として医事システムに送信されるため会計の取り漏れを防げる、③眼科における診察前検査から診察までのワークフローを一覧で表示し、進捗を管理できる、といった特徴を持つ。

 一方、ワイズマンの電子カルテシステムERの新バージョンなど、ユーザーの要望に応えた形で操作性を向上させた製品も多い。同システムでは、いくつかの処方オーダーを1つにまとめたり、分割したり、あるいは定期的な処方レシピの一部を臨時処方に変更する際に、従来はいったん取り消して新たに変更したオーダーをしなければならなかったものを、ドラッグ&ドロップでまとめ操作や分割操作を可能にした。加えて、カレンダー画面から処方した薬剤の中断、変更、継続などを容易にできるように改良して、操作性を向上させた。

●液晶を使った電子ぺーパーのソリューションが注目を集める

GEヘルスケア・ジャパンのポケットサイズの超音波診断装置「Vscan」。在宅、僻地・災害時現場、救急車内での一次スクリーニングなど用途は幅広い

 新たな素材技術として電子ペーパーを利用したアメニティ製品の展示も見られた。来場者が高い関心を示したのが、ホスピタルショウ直前に正式発表された富士通の患者案内ソリューション「NAVIT」だ(既報記事はこちら)。液晶を使った電子ペーパーを活用した製品で、①IC型診察券を電子カードホルダーに挿入するだけで受付が完了、②電子カルテシステムと連携して患者単位できめ細かな案内が可能、③表示画面の書き換え時のみ電力を利用する省電力性、という特徴を持つ。多くの病院では、患者案内システムとして大画面の液晶ディスプレイを待合場所に多数設置している。その導入・運用にコストがかかる割には、ディスプレイの見える待合室にいなければならないなど、患者のストレス緩和につながらなかった。ブース内では、何人もの病院関係者が実際の導入に向けて具体的な質問を浴びせるなど、終日賑わいを見せていた。

 セイコーインスツル(SII)も、液晶ベースの電子ペーパーを利用した表示システムを出品した。同社の表示システムは、病室入口の患者氏名・入院期間などの表示、ベッドサイドでの食事メニュー・カロリー表示、あるいは居室の清掃案内、産科の患者および出生児名表示など、さまざまな情報表示に利用できる。管理システム側と双方向無線通信が可能で、中継機1台で6万5000台の表示端末を管理できる。アクセスポイントから中継器までは一般的な無線LAN規格IEEE802.11bで、中継器からディスプレイまではIEEE802.15.4(通信速度250kbps)という電力消費の少ない方式を利用している。ディスプレイの液晶も、一度画面表示をした後は電力を遮断しても表示が保持されるため、省電力化につながる。ブースでは、簡単な操作で表示画面のレイアウトが可能なツールを用意し、さまざまなアプリケーション利用ができることをアピールした。

●ポケットサイズの超音波診断装置やネットワークインフラ関連展示も

ホスピタルショウ初出展のネットワーク機器メーカー、アライドテレシスは、24時間365日病院業務を止めない冗長ネットワーク、障害の早期発見と迅速な対応を実現するネットワーク監視、ループ障害を未然に防ぐループガードといったソリューションを紹介した

 モダリティの展示では、非常に多くの来場者の目を引いていたのが、GEヘルスケア・ジャパンの超音波診断装置「Vscan」(ヴィースキャン)だ。サイズは縦135mm×横73mm×奥行き28mmとポケットサイズ。バッテリー、プローブを含めても重量はわずか390gと、超音波診断装置として最小・最軽量を誇る(同社比)。ポケットに入れて携帯できるうえに、親指1本で操作可能なダイヤルキーが付属しており、時や場所を選ばず素早いエコー検査ができる。撮影画像は3.5インチの液晶画面上で閲覧でき、マイクロSDカードへの保存と、ドッキングステーションを通じてPCへのデータ転送が可能。プローブの交換はできないが、心臓、腹部、産婦人科の3領域に最適な撮影条件をあらかじめメニューに設定してある。在宅医療の現場をはじめ、遠隔地や災害時現場、救急車内での一次スクリーニングなどでの利用を想定しているという。

 ネットワークインフラ関連では、アライドテレシスがホスピタルショウに初出展した。これまで同社は、医療情報学連合大会の企業展示に参加し、定期的に初心者向け病院ネットワークセミナーを開催してきているが、ホスピタルショウは初めて。ルーターやスイッチなどの製品に加えて、手術室の映像を医局や控え室にネットワークで配信するシステム、無線LANシステムなど、「院内LAN」関連システムをブース内に構築して紹介した。従来HISベンダーやSIerに丸投げされてきた感のある病院ネットワークインフラの重要性を提示すると同時に、ネットワークの可視化による運用管理性の向上とコスト削減をアピールした。

(増田克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)


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