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リサーチナースはエキサイティング!

2010/09/10
喜吉テオ紘子

 私が勤務しているのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSFClinical & Translational Science Institute(CTSI)臨床研究病棟です。ここに勤めて5年になりますが、その間に、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(いわゆる狂牛病)の診断・治療、蛋白質と骨粗鬆症の関係、高血圧と塩分の関係、様々な抗癌治療、麻薬依存症の治療、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究などに「リサーチナース」として携わってきました。

リサーチナーシングの醍醐味
 リサーチナースとして最先端の研究に参加し、その知識と実践に触れるという体験は、非常にエキサイティングです。また、大学院で学んだ知識を臨床で生かす面白さもあります。

 臨床研究病棟の中で、ナースは何をしているのでしょう? 被験者となる患者に対して通常の看護ケアを行うことはもちろんですが、それに加えて研究の臨床プロトコルの作成と実践が大きな役割となります。臨床プロトコルには、「診断名」「アレルギー情報」「バイタルサイン」「与薬」「活動」「食事」「採血方法」などについて、注意点や手技が細かく明記されます。これを作成し、実践するリサーチナースには、膨大な情報を処理する能力と几帳面さが欠かせません。

 リサーチナースに求められることは、研究の目的をしっかりと理解した上で、看護の知識と技術を駆使して被験者の負担を減らしながら、正確な研究データを得ることです。また、被験者は健常ボランティアであったり、特定の疾患の患者であったりするのですが、彼らが継続的に参加できるような環境作りも重要です。さらに、患者のアセスメント、治験薬の知識の提供、副作用の予防、被験者の権利擁護なども重要な役割です。

臨床研究病棟と研究者の関係
 UCSF傘下の臨床研究病棟は、私が所属する病棟のほかに4カ所あります。臨床研究病棟がユニークな点はいくつかあります。一つは、UCSFの研究者たちに臨床の場を提供しているところです。この病棟自体に研究者が所属しているわけではありません。研究者グループは多くの場合、自前の入院・外来設備を持たないため、必要なときにCTSIと契約して入院・外来サービスを利用するのです。

著者プロフィール

喜吉テオ紘子

カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)看護学博士課程
/UCSF Medical Center 臨床研究病棟看護師

10歳から15歳までアメリカで過ごす。帰国後、国際基督教大学高等学校に入学。2000年聖路加看護大学卒業後、2003年まで虎の門病院分院の内科病棟(肝臓・精神科)勤務。2005年カルフォルニア大学サンフランシスコ校看護学修士取得(看護管理・医療政策専攻)。2005年よりカルフォルニア州Registered Nurseとして現職。2007年よりUCSF看護学博士課程に在籍。日米の医療安全・医療の質向上に興味を持つ。在米中は主に翻訳・投稿・学会発表を通じて日本の看護界とのコネクションをキープ。博士論文のテーマは「呼吸器関連肺炎(VAP)予防ガイドラインの活用促進因子の探求」。趣味は料理、ランニング、サイクリング、ワイン・テイスティング(カルフォルニア・ワインはいいですよ)。

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