日経メディカルのロゴ画像

Ann Intern Med誌から
パリフェルミンが化学療法による重症口腔粘膜炎を予防

 化学療法誘発性粘膜炎は痛みが強く、治療の遅れや用量削減を余儀なくされる可能性がある。米Texas大学M.D.Anderson癌センターのSaroj Vadhan-Raj氏らは、組み換えヒトケラチノサイト成長因子製剤のパリフェルミン(日本では未承認)を事前に単回投与しておくと、重症の口腔粘膜炎を予防できることを無作為化試験によって示した。論文は、Ann Intern Med誌2010年9月21日号に掲載された。

 パリフェルミンは、造血幹細胞移植を受ける患者に複数回投与すると粘膜炎が軽快化するとして、米国ではこの用途に用いることが許可されている。

 だが、複数回の投与は粘膜組織の増殖を促し、粘膜の化学療法感受性を高める可能性が懸念される。

 著者らは、複数サイクルの化学療法を受ける癌患者に、各サイクルの開始前にパリフェルミンを単回投与すれば、重症の口腔粘膜炎を予防できるのではないかと考え、二重盲検の無作為化フェーズ2試験をM.D. Anderson癌センターで実施した。

 05年12月から08年2月まで、患者登録を実施した。肉腫と診断されており、Karnofskyスコアが80以上、骨髄、腎臓、肝臓は適切に機能している15~65歳の患者を48人(年齢の中央値は45歳)登録。2対1で無作為にパリフェルミン180μg/kg(32人)または偽薬(16人)に割り付けて、各サイクルの開始3日前に単回投与し、08年5月まで追跡した。

 全員が、ドキソルビシンベースの化学療法を3週おきに最大6サイクル受けた(ドキソルビシンは90mg/m2を3日間連続静注)。この治療を受ける肉腫患者においては、75%を超える人々に臨床的に意義のある粘膜炎が発生すると報告されている。

 重症の粘膜炎を呈した患者については、それ以降、オープンラベルでパリフェルミンを投与した。また、重症粘膜炎を繰り返す患者にはドキソルビシンの減量(75mg/m2)を行った。

 粘膜炎の重症度はWHOのoral toxicity scale(グレード0の「粘膜炎なし」からグレード4の「広範な粘膜炎で液体の摂取も困難」まで5段階で評価)を用いて判定した。

この記事を読んでいる人におすすめ