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JAMA誌から
無症候性甲状腺機能低下症でTSH高値なら冠イベントリスクが上昇

 チロキシン値は正常だが甲状腺刺激ホルモンTSH)値が上昇した、無症候性甲状腺機能低下症の患者は広く見られる。こうした患者の中から治療が必要な人々をどのように同定すればよいのか。スイスLausanne大学のNicolas Rodondi氏らは、TSH高値、特に10mIU/L以上の患者では、甲状腺機能正常群に比べ、冠イベントリスクが1.89倍、冠疾患死亡リスクは1.58倍になることを明らかにした。詳細は、JAMA誌2010年9月22/29日号に報告された。

 以前から、無症候性甲状腺機能低下症と高コレステロール血症やアテローム硬化症との関係が報告されており、ハイリスク患者を同定して介入を行えば、心血管疾患が予防できると考えられていた。しかし、無症候性甲状腺機能低下症と心血管イベント、心血管死亡の関係について調べた大規模な前向きコホート研究では、一貫した結果は得られていなかった。その理由の一部は、個々の研究が分析対象とした人々の年齢や性別、TSHレベル(甲状腺機能低下症の重症度)や、心血管疾患の有無などにあると著者らは考えた。

 そこで著者らは、大規模な前向き研究に参加した患者ひとりひとりのデータを得てメタ分析すれば、こうした交絡因子候補の影響を知ることができると考えた。文献データベース(MEDLINE、EMBASE)に1950年から2010年5月31日に登録された研究の中から、成人の無症候性甲状腺機能低下症患者の冠疾患リスクと全死因死亡のリスクを評価した前向きコホート研究を探した。

 ベースラインの甲状腺機能(TSHとチロキシンのレベル)とその後の冠イベント(非致死的心筋梗塞、冠疾患死亡、狭心症による入院、冠動脈血行再建術)、冠疾患死亡(心臓突然死も含む)、全死因死亡の発生を調べて、甲状腺機能正常群と比較していた研究を選んだ。研究者たちに直接連絡を取り、個々の患者のデータと、ベースラインの心血管危険因子の状態、心血管疾患歴、ベースラインの投薬状況などに関する情報を入手した。

 米国、欧州、豪州、ブラジル、日本で行われた11件の前向きコホート研究から患者レベルのデータが得られた。11件の試験はすべて、冠疾患死亡と全死因死亡について報告していた。これらの研究は、5万5287人の患者を、中央値2.5年から20年追跡していた(全体では54万2494人-年の追跡となった)。

 冠イベントリスクに関する情報は、7コホートに属する2万5977人について得られた。

 今回の研究では、TSHレベルが0.50~4.49mIU/Lを甲状腺機能正常とし、TSHが4.5~19.9mIU/Lでチロキシンレベルは正常の患者を無症候性甲状腺機能低下症とした。

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