日経メディカルのロゴ画像

BMJ誌から
抗精神病薬使用者はVTEリスクが1.3倍

 抗精神病薬を処方されている患者では、そうでない人々に比べて静脈血栓塞栓症VTE)リスクが1.32倍になり、特に非定型抗精神病薬使用者のリスクが1.73倍と高いことが、英Hucknall Health CentreのChris Parker氏らが行った集団ベースのケースコントロール研究で明らかになった。論文は、BMJ誌2010年9月25日号に掲載された。

 抗精神病薬は、嘔吐やめまいなどを訴える患者にも広く処方されるようになっている。これまでにも、抗精神病薬がVTEリスクを上昇させると報告した研究はあったが、一貫した結果は得られていなかった。

 著者らは、英国のプライマリケアを受診した人々からなる大規模な集団を対象として、抗精神病薬がVTEのリスクを上昇させるかどうかを調べるネステッドケースコントロール研究を実施した。

 英国の一般開業医の診療所525施設で過去16年間に登録された1100万人を超える患者データ(症状や診断に加えて処方薬に関する情報も含む)が登録されている、UK QResearchプライマリケアデータベースからケースとコントロールを選出した。

 ケースは1996年1月1日から2007年7月1日までに初回VTEと診断された16歳以上の患者とし、ケース1人当たり4人のコントロールを、VTE歴がなく、ケースと年齢、受診年、性別、かかりつけ医がマッチする人々の中から選んだ。

 データベースにデータを登録している診療所の中で条件を満たしたのは453施設。これらを受診していた726万7673人の患者のうち、VTEと診断されたのは3万1612人で、罹患率は10万人当たり118人だった。

 VTE発生前24カ月間の情報がそろっていなかった患者などを除いて、ケース2万5532人(1万5975人は深部静脈血栓症、9557人は肺塞栓症)とコントロール8万9491人を分析した。

 VTE前の24カ月間に抗精神病薬の処方を受けていたケースは2126人(8.3%)、マッチするコントロールは4752人(5.3%)。抗精神病薬処方歴あり群の静脈血栓塞栓症のリスクは、処方歴なし群に比べ32%高かった。社会経済的地位、精神的健康状態、VTEのリスクを高める併存疾患(冠疾患、心不全、脳卒中、癌、炎症性腸疾患など)、VTEリスクの短期的上昇をもたらすイベント(股関節部の手術、股関節または下肢の骨折、急性の感染、妊娠など)、VTEリスクを高める薬剤の併用(経口避妊薬とホルモン補充療法、タモキシフェンなど)、それ以外の薬剤の併用(スタチン、NSAIDs、アスピリン、抗躁病薬など)で調整したオッズ比は1.32(95%信頼区間1.23-1.42)となった。

この記事を読んでいる人におすすめ