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息子に田舎の病院を継がせるための奇策

2010/10/13

 第1回のブログは、いささか緊張して書かせていただいたのですが、予想外に様々な好意ある反応をいただいて、ホッとしています。

 さて、今はどこもかしこもモノが余っている時代なので、何事につけ「獲得する」ことより「選ぶ」ことに腐心します。もちろん医学部は相変わらず激戦なので「獲得する」というスタンスは相変わらず必要ですが、それでも落ちる子は15、6校受けてもことごとく落ちるのに、合格する子は受験校のほとんどに合格し、そこから選ばなくてはならない、という落ちた子からすれば実にうらやましい現実もあります。

 そんな時、選ぶ基準の第一はやはり学費です。国公立に受かれば、地方大学であってもまず入学することになるでしょう。それが親の希望だからです。子どもとしては、首都圏か関西の大学に行きたいというのが本音でしょう。若者は誰しも都会でバラ色の大学生活を送りたいと思うものです。でも、最終的には親の顔色を見て地方の国公立というケースが多いようです。

 では、受験生はなぜ地方を嫌うのでしょうか。理由はいろいろあるようですが、「医師のイメージは、自由で高収入が保障されること。組織に縛られるのはイヤだ」と彼らの多くは答えます。「地方=田舎」のイメージが強く、田舎特有の因習やしがらみ、さらには、当該地域での一定期間の勤務義務という「地域枠」の条件から想起される“ヒモ付き”の印象が、地方は避けたいと思わせる理由になっているのではないかと思われます。

 確かに、地方の医科大学は、国公立・私立を問わず、とにかく医師が足りないという地元の声を反映して、なるべく地元に残ってくれる医師を欲しがっています。その表れが「AO入試」とか「地域枠推薦入試」とか名付けられた「地域枠」、いわば「地元生優先入試」です。私は東京生まれだから関係ない、大阪生まれだから無縁だ…という方も「募集要項」をじっくり読んでみてください。福岡大医学部など、祖父母が九州、沖縄、山口に住んでいればOKなのです。もっとも1浪まで、しかも現役・1浪合わせて1人1回限りという制限つきですが。

 先でも触れたように学費は大学選びの際の大きなポイントですが、ちょっと裏技的な調達法もあります。例えば、大阪府枚方市にある社会福祉法人・枚方療育園は、受験生の時点で面接などを経て“内定”していた高校生・浪人が医学部に合格した場合、6年間の学費を全額負担してくれます。その代わり、卒業後は枚方療育園の関連施設で10年間は勤務する条件になっています(厳密には6年間の修学資金を貸与し、10年勤務後は返還免除となります)。

 この制度は、進学先がどこの医学部でも構いません。たとえ、学費が最も高い帝京大医学部であっても、6年間は全額面倒を見てくれます。また、勤務地となる枚方市はへき地ではありませんから、都会暮らしにこだわるのであれば、一つの選択肢にはなるでしょう。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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(松原好之著、日経メディカル開発、1800円+税)

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