日経メディカルのロゴ画像

盛り上がってきました、移植医療

2010/10/20
津久井宏行

 先日、第29回日本心臓移植研究会(会長:東京医科歯科大学循環器内科・磯部光章先生)に参加しました。今年の7月17日に改正臓器移植法が施行され、以来、脳死下移植の実施が毎週数件のペースで報じられています。

 2010年の脳死下臓器提供は9月30日の時点で17例で、うち14例は改正移植法施行後に行われたものです。心臓移植に限ると、2010年9月30日までに行われた脳死下心臓移植は13例。うち10例は、改正移植法施行後の8~9月に発生したものです。これまで年間の移植数が10例前後であったことを考えると、大きな転換期を迎えたことは間違いありません。その状況を反映し、今回の心臓移植研究会は例年より熱気を帯びているように感じました。

 ただ、移植医療全般に視野を広げると、改正移植法による影響の大きさは対象の臓器によって多少の差があるようです。先日、ドナー摘出病院に伺った際に、腎臓摘出のために来られていた先生とお話しする機会があり、昨今の脳死下移植の増加について、興味深い見解をお聞きしました。

 腎臓移植では以前から、脳死下のみならず心臓停止下の臓器提供が行われてきましたが、その発生頻度は、法改正後の脳死下臓器提供と同じ程度であったそうです。実際に日本臓器ネットワークのホームページで最近のデータを見ると、臓器提供件数(脳死下+心臓停止下)は今年の1~6月までの5~11例/月に対し、7月は6例、8月は10例、9月は13例。急激に増加したといえるほどではありません。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

この記事を読んでいる人におすすめ