癌治療ワクチンの臨床試験に問題があるとした10月15日付朝日新聞の報道を受けて、東京大学医科学研究所は10月15日、記者会見を開催。「専門医なら誰でもありふれた事象と認識している」(東大医科研ヒトゲノム解析センター教授の中村祐輔氏)、膵臓癌における消化管出血をことさら問題視するなどした記事内容に対し、大きな疑義と不信を示した。
朝日新聞は10月15日付の朝刊で、医科研が2008年に実施した癌治療ワクチンの臨床研究で、重篤な有害事象と判定された消化管出血が1例発生したのに、その事実をほかの臨床研究における共同研究先に伝えていなかったとの記事を1面トップで掲載した。
この報道に対し、医科研側の会見には、東大医科研所長の清木元治氏、東大医科研附属病院教授(前病院長)の山下直秀氏、中村氏が出席した(写真)。
中村教授は当該臨床研究に関与せず
問題を指摘された臨床研究は、膵臓癌患者を対象に、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)由来のペプチドを抗原とする癌治療ワクチンを投与したというもの。全6症例のうち、08年8月にエントリーした患者で消化管出血が12月に発生した。
この臨床研究は、医科研病院の山下氏が中心となって実施したもので、朝日新聞の記事中で「ペプチドを開発」と名指しされた中村氏は関与していない。ただし、研究費の一部を中村氏が持つ研究資金から援助したという。また、臨床研究は附属病院単独によるもので、共同研究ではない。
一方で、中村氏の研究チームは、複数のペプチドワクチンを創製し、全国の医療機関と共同でさまざまな癌を対象にした臨床研究を実施している。共同研究先の施設数は59で、登録した被験者数は9月末で1089人という。この臨床研究のネットワークは、CAPTIVATIONネットワークと名付けられている。
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