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JAMA誌から
DHAサプリは産後うつや子供の神経発達に利益なし
妊婦2400人を対象とした無作為化試験の結果

 魚介類に多く含まれるドコサヘキサエン酸DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸を妊娠中に摂取すると、産後うつリスクが低下し、産児の発達が向上することを示した疫学研究が複数ある。しかし、オーストラリアFlinders医療センターのMaria Makrides氏らが妊婦約2400人を対象に行った二重盲検の多施設無作為化試験で、そうした利益を否定する結果が得られた。論文は、JAMA誌2010年10月20日号に掲載された。

 これまでに行われた、妊婦や産児を対象とする介入試験では、DHAの利益を示すエビデンスは得られていなかった。その理由の1つは、研究の質の低さにあった。にもかかわらず、妊娠したらDHAの摂取を増やすことが推奨され、妊婦向けのDHAサプリメントが市場で成功を収めている。

 著者らは、DHAの利益を明らかにすると同時にリスクがないかどうかを確認する必要もあると考え、妊娠後半期にDHAの摂取を増やすと、重症の産後うつの発生率が低下し、生まれた子供の神経発達上の転帰が向上するかどうかを調べる無作為化試験DOMInOを、オーストラリアの産科病院5施設で実施した。

 05年10月31日から08年1月11日まで妊婦の登録を進めた。単生児を妊娠している妊娠21週未満の女性で、DHAサプリメントを使用していない2399人を登録。DHAを豊富に含む魚油カプセル(DHAの1日の摂取量は800mg、エイコサペンタエン酸=EPAの摂取量は100mgになる)またはDHAは含まない植物油カプセル(菜種油、ひまわり油、パーム油を含む)のいずれかに割り付け、出産まで投与した。

 産後6週時と6カ月後に、エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)を用いて産後うつの発生率を調べた。30点満点のスコアが12点以上だった女性を高度の産後うつとした。

 小児については、生後18カ月の時点でBayley乳幼児発達試験(BSID-III)を実施し、発達レベルを評価した。認知機能、言語能力、運動能力のスコアはそれぞれ平均が100点、SDが15になるよう標準化し、スコアが115を超えた場合を発育促進があったとし、85未満は発育遅延と判定した。著者らは、介入群と対照群のスコアの差が5以上であった場合にこれを検出するために必要な小児の数を推定、脱落の可能性などを考慮して、産児の中から無作為に726人を選んで追跡した。

 主要アウトカム評価指標は、高度の産後うつの発生率と、小児の認知機能、言語能力の発達レベルに設定、intention-to-treatで分析した。

 2399人の妊婦のうち96.7%(2320人)が試験を完了した。

 介入群と対照群の出産後6カ月間の高度な産後うつの罹患率に差はなかった。それぞれ9.67%と11.19%で、施設、経産回数、Maternal Social Support Index(MSSI)スコア、年齢、うつ病歴、喫煙歴で調整した相対リスクは0.85(95%信頼区間0.70から1.02、P=0.09)となった。

 試験期間中に新たにうつ病と診断された、またはうつ病に対する治療が必要と診断された女性の割合にも差はなかった。調整相対リスクは0.80(0.62-1.02、P=0.07)。

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