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PNAS誌、J Immunol誌から
IL-33が喘息治療薬の標的として有望か
自然免疫を介したアレルギー誘導作用が確認される

 気管支喘息は、ほかのアレルギーと同様、アレルゲンに対するIgE抗体の過剰反応によって生じると考えられてきた。だが、国立成育医療研究センター研究所の大保木啓介氏らは、喘息関連遺伝子として注目されているインターロイキン33(IL-33)を欠くマウスを使って実験を行い、喘息や腸のアレルギー反応の一部は、獲得免疫でなく自然免疫によって引き起こされる可能性を示した。論文は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences;PNAS)誌電子版に2010年10月11日に掲載された。

 また、同研究所を中心とする研究グループは、ヒト肺組織由来の細胞の中で、気道上皮細胞と微小血管内皮細胞にIL-33と結合するST2受容体が発現していること、IL-33の作用はST2受容体を介して現れること、ステロイドは気道上皮のIL-33の作用は抑制できるが、血管内皮細胞においては部分的な抑制しか起こらないことを示した。論文は、藤田保健衛生大学皮膚科の矢上晶子氏らが、Journal of Immunology誌電子版に2010年10月6日に発表した。

 これらの知見は、IL-33が喘息や大腸炎の治療薬開発の標的として有望であることを示すものだ。

気道粘膜、腸粘膜、全身の自然免疫の増強にIL-33が重要な役割
 IL-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインで、アレルギーを促進する作用を持ち、特にTh2が関与する免疫反応において重要と報告されていたが、正確な役割は分かっていなかった。

 喘息においては、患者にIL-33の発現上昇が見られること、ゲノムを対象とする疾病関連遺伝子の探索により、喘息発症に影響する最も重要な遺伝子の1つがIL-33と報告されていることから、このサイトカインが喘息発症にどうかかわるのかに関心が集まっていた。

 これまで喘息では、IgE抗体を介した免疫反応が重要であると広く考えられてきた。だが、大保木氏らがIL-33遺伝子を破壊したマウスを元に様々な疾患モデルマウスを作製したところ、IL-33がなくても既知の免疫反応やアレルギー反応の多くは正常に起きたが、酵素活性を持つアレルゲン(パパインやダニ抽出物〔注1〕など)などの刺激物質による気管支の炎症は顕著に低下していた。さらに、大腸炎や敗血症などにもIL-33が関与していることが明らかになった。

 著者らは、T細胞とB細胞を欠くRag2-/-〔注2〕、TLR4を欠くTLR4-/-マウスやIL-33-/-マウスなどを利用して疾患モデルを作製した。それらのマウスは、T細胞仲介性のIV型反応(接触性皮膚炎などの遅延型過敏症)と実験的自己免疫性脳脊髄炎などの自己免疫疾患にはIL-33は不要であること、一方、肺と腸の粘膜の自然免疫においてはIL-33が重要であることを示した。IL-33は、プロテアーゼアレルゲン誘導性の気道の炎症と、オボアルブミン(OVA)誘導性のアレルギー性気道炎症に必須で、その作用は抗原特異的メモリーT細胞の獲得とは無関係だった。

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